いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
1〜3月のドラマ「リバーサルオーケストラ」は好評のうちにハッピーエンド?で終了しました。
このドラマのテーマモチーフとして用いられ、また最終回で演奏されたチャイコフスキーの交響曲第5番について、中でも「昭和の吹奏楽」として吹奏楽でのこの曲の演奏について見ていきます。
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調作品64
チャイコフスキーの第5交響曲は、第4番から10年経った1888年に作曲されたチャイコフスキー円熟期の作品です。
専門家の評価も自己評価も揺れ動いたようですが、今では名作の一つとして高く評価され、交響曲第4番、交響曲第6番「悲愴」とともに後期の三大交響曲として人気の高い作品です。
勇壮さと情熱迸る第1楽章、美しくロマンティックなメロディに彩られた第2楽章、スケルツォではなくワルツを配した第3楽章、そして燃え上がるような迫力と絢爛豪華なフィナーレと、最初から最後まで飽きることなく波瀾万丈で楽しむことができると思います。
楽曲構成
第1楽章:ホ短調 序奏とコーダをもつ自由なソナタ形式
第2楽章:ニ長調 三部形式「多少の自由さをもつアンダンテ・カンタービレ」
第3楽章:イ長調 コーダをもつ複合三部形式 アレグロ・モデラート
第4楽章:序奏とコーダをもつソナタ形式(ロンド・ソナタ形式)輝かしい勝利と全民衆の祭典のようなフィナーレ
演奏時間:40〜50分
楽器編成
フルート3(第3フルートはピッコロに持ち替え)、オーボエ2、クラリネット2(A管)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2(A管)、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、弦五部
運命の主題
第1楽章冒頭に奏される一つの主題が全ての楽章に登場します。
この主題は「運命」を象徴しているとされ、第1楽章の冒頭で暗く重々しく提示される一方、第4楽章では勝利を表すかのように輝かしく奏されます。
吹奏楽版 チャイコフスキー交響曲第5番
オーケストラの作品なのだから、吹奏楽で演奏する意味はないという方からは大目に見ていただいて、吹奏楽によるこの作品の演奏をYouTubeで検索してみると、全楽章かつ原調の演奏が見つかりました。
東大阪市のアマチュアの吹奏楽団による演奏です。
筆者が吹奏楽にお世話になっていた大昔では、シャープ系の作品は短二度上げるか下げるかしたアレンジが一般的で、この曲に限らず原調で演奏することが当たり前にようになった現在の状況は想像すらできませんでした。
ヘ長調に移調したアレンジで演奏された動画はこちら。
立派な演奏だと思います。
移調してしまうと、ホ長調独特の甘さを伴った重厚さがなかなか前面に出てこないのですが、筆者の時代には必要悪のような部分もありました。
吹奏楽コンクール自由曲としての演奏(昭和の吹奏楽)
かつて吹奏楽におけるチャイコフスキーといえば、スラヴ行進曲や交響曲でも第4番の第4楽章が人気のナンバーで、第5番が採り上げられるのは稀だったようです。
吹奏楽コンクールデータベースで、チャイコフスキー/交響曲第5番/全日本で検索すると出てきたのは以下の5つでした。
1962年 福岡大学(野田正一編曲)指揮:野田正一 5位
1970年 秋田市立山王中学校(木内博編曲)指揮:木内博 銀賞
1971年 横手市民吹奏楽団 指揮:小川文男 銀賞
1975年 秋田県立秋田南高等学校(木内博編曲)指揮:高橋紘一 銅賞
1977年 阪急百貨店吹奏楽団(鈴木竹男編曲)指揮:鈴木竹男 銀賞
いずれも第5楽章と思われますが、12分という制限時間の中で、4分程度の課題曲を含めて収めようとすると、これまた必要悪のカットという問題が発生します。
以下、音源のある3団体では、展開部は概ねあるいはバッサリとカットされ、そのほかにも削られた部分が存在します。
山王中学校
秋田南高校
阪急百貨店
音楽的な意味合いはもちろんですが、そもそも物理的な構成から、山王中と阪急百貨店の演奏はなかなか苦労されているように感じました。
その意味で秋田南高校は序奏の一部分と展開部全体をカットしていましたが、全体の流れとして聴き手の耳に優しい構成になっていると思います。
個人的には「これで銅賞はないでしょう」と今でも思います。
以降聴くことができる見事なアンサンブルはすでに完成されていますし、何が足りなかったのか聞いてみたいくらいです(展開部が(カットされて)ない、とかではなく)。
この翌年、あの「ペトルーシュカ」の超名演が生まれました。
ちなみに、同じ年の中国大会で島根県の川本高校が採り上げて金賞を受賞しています。
谷口先生の編曲ということもあり、この演奏がとても気になります。
データベースには記載がなかったのですが、筆者がコンクールの中で聴いたこの作品(第4楽章)の演奏では、1978年兵庫県大会金賞の尼崎市立尼崎東高校(現、尼崎双星高校)の演奏がややスッキリしすぎているきらいもありましたが、とても立派な演奏だったと記憶しています。
まとめ
久しぶりに昭和の吹奏楽について語ってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
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