ピアニスト福間洸太朗さんプロデュースの「レア・ピアノミュージック」第2回が2020年8月22日に開催されました。
ジェフスキの人気曲「不屈の民」変奏曲がピアニスト大瀧拓哉さんによって演奏されました。
今回はその模様について見ていきますので、最後までよろしくお願いいたします。
福間洸太朗プロデュース「レア・ピアノミュージック」
このプロジェクトの概要、スケジュールについては過去のエントリーをご覧ください。
大瀧拓哉さんのプロフィールと事前インタビュー
大瀧さんは新潟県長岡市の出身で、長岡高校普通科から愛知県立芸術大学に進み、同大と同大学院を首席で卒業されています。
その後ドイツとフランスに留学され、シュトゥットガルト音楽演劇大学大学院、アンサンブルモデルン・アカデミー(フランクフルト)を各々修了。さらにパリ国立高等音楽院第三課程現代音楽科修了。
コンクールの入賞歴は、中部ショパン学生ピアノコンクール金賞、野島稔よこすかピアノコンクール第3位を経て、2016年オルレアン国際ピアノコンクール(フランス)で優勝されました。同時にモーリス・オハナ賞、オリヴィエ・グレフ賞を受賞しています。
福間さんがインタビュアーとなって大滝さんへの事前インタビューが行われています。
質問内容は以下の通りとなっています。
🔸この企画への招聘を受けての感想
🔸ジェフスキ「不屈の民」変奏曲との出会い、演奏回数、演奏を聴いた回数など
🔸「不屈の民」変奏曲の構成
🔸現代音楽、今後のレパートリーについての考え方
🔸CD「Bela Bartok and the Virtuosity」
🔸中国ウイルス騒動と音楽・演奏に対する考え方の変化
🔸ドイツ、フランスへの留学
🔸現在の活動
ジェフスキ「不屈の民」変奏曲
チリのセルヒオ・オルテガによって作曲された政治闘争歌「不屈の民」をもとに36の変奏で構成された変奏曲で、1975年にポーランド系アメリカ人の作曲家フレデリック・ジェフスキによって作曲されました。
この「不屈の民」は1973年9月11日、軍のクーデターによって非業の死を遂げたチリの大統領サルバドル・アジェンデの死を悼み、人々が「El Pueblo Unido Jamás Será Vencido! (団結した人民は決して敗れない!)」と叫んでいるのを、チリの作曲家セルヒオ・オルテガが聴き、曲をつけて歌にしたもので、このメロディをポップグループのQuilapayunが歌ってから、政治的独裁に対する抗議のシンボルとなったとのこと。ジェフスキは、オルテガと当時住んでいたイタリアで会っていたそうです。
この作品は、ピアニストのウルスラ・オッペンスの委嘱作品で、アメリカ建国200年記念音楽祭のリサイタルにおけるベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」に組み合わせる作品をオッペンスからリクエストされ、1975年9月から10月にかけて作曲されました。1976年初演。
Spotifyでオッペンスの演奏を聴くことができます。
ちなみにジェフスキ自身も3度にわたって自作自演しています。
YouTubeではその一部が公開されています。
楽譜は全音から出版されています。
曲の構成/大瀧さんによる解説
大瀧さんのインタビューをもとにまとめるつもりだったのですが、大瀧さんご自身によるnoteの記事を発見しました。
これに勝るものはあり得ないということでリンク先をご紹介します(有料記事ではありません)。

ライブの模様
ツイッターから演奏前のつぶやきを拾ってみました。
ひたすら練習の日
不屈の民Var.10。適当に弾いてるわけじゃないよ。#おうちでジェフスキ pic.twitter.com/8V2er0datJ— 大瀧拓哉 (@takuyaotaki) August 18, 2020
リハーサル中。素晴らし過ぎるベヒシュタイン出会って感動しております… https://t.co/PYmXmBCDWy pic.twitter.com/MxxCEJ1lno
— 大瀧拓哉 (@takuyaotaki) August 22, 2020
さて、ライヴの冒頭に福間さんのあいさつ、そして大瀧さんと演奏曲の紹介があり、そのあと上のインタビューの中から「不屈の民変奏曲」の解説部分が抜粋して放送されました。
演奏は20:10ごろに始まりました。
楽曲解説にある構成については、やはり手許に表「6×6」があった方が良さそうなので、整理してみました(写しただけですが)。
サイクル1 :単純に |
サイクル2 :リズム |
サイクル3 :メロディ(抒情的) |
サイクル4 :対位法(対立) |
サイクル5 :ハーモニー |
サイクル6 :組合せ(要約) |
|
サイクル1 :単純に |
第1変奏 | 第2変奏 | 第3変奏 | 第4変奏 | 第5変奏 | 第6変奏 |
サイクル2 :リズム |
第7変奏 | 第8変奏 | 第9変奏 | 第10変奏 | 第11変奏 | 第12変奏 |
サイクル3 :メロディ(抒情的) |
第13変奏 | 第14変奏 | 第15変奏 | 第16変奏 | 第17変奏 | 第18変奏 |
サイクル4 :対位法(対立) |
第19変奏 | 第20変奏 | 第21変奏 | 第22変奏 | 第23変奏 | 第24変奏 |
サイクル5 :ハーモニー |
第25変奏 | 第26変奏 | 第27変奏 | 第28変奏 | 第29変奏 | 第30変奏 |
サイクル6 :組合せ(要約) |
第31変奏 | 第32変奏 | 第33変奏 | 第34変奏 | 第35変奏 | 第36変奏 |
緊張感を保った大変素晴らしい演奏でした。
タッチや響きが良く考えられていて、曖昧な音が一つとしてなく、エッジが効いてスピード感満載のところ、叙情性たっぷり歌うところ、そして「間」がとても魅力的でした。
約1時間という長丁場の熱演でしたが、思わず惹き込まれて時間はあっという間に過ぎ去り、ラストは大変名残惜しいエンディングでした。ブラヴォ!
なお、アーカイヴの無料視聴は2020年8月24日までですのでお急ぎください!
まとめ
演奏時間が1時間にもおよぶ大曲がいきなり2回目に演奏されるということで、聴く方も不屈の精神力が必要かと心配でしたが、丁寧な解説のおかげでスッキリとライヴに臨むことができたのではないでしょうか。
演奏も素晴らしいものでした。こうなったらホールで「間」と「空間」を味わいたいなどと欲張ったことを考えてしまいますね(8月24日に東京文化会館でリサイタルがあり、この曲も演奏されます)。
福間さんとのインタビューの中ではレコーディングのお話が出ていましたので、大瀧さんの新しいアルバムが発売されるかも知れませんね。とても楽しみです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
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