いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
2020年7月から、過去分とは別に、そのときのレッスンや練習記録について記事にまとめています。
前回は、直前のレッスン(2021年3月14日)の模様についてお話しました。
今回は、本番用のショパン「バラード第1番」の楽譜に「練習番号」を付すにあたって、分析というには大袈裟ですが、備忘の意味も兼ねて整理をしてみました。
僕自身のためのものではありますが、お付き合いいただければ幸いです。
これまでのお話
現在のレッスンについての記事はこちらです。
レッスン再開後以降の模様についてはこちらでまとめています。
番外編として「大人の発表会」への参加についてもお話ししてきています。
ショパン:バラード第1番構成に関する整理
この曲については多くの分析を目にすることができますが、大阪芸術大学の田之頭一知さんの解説を参考にして、僕自身の備忘として整理してみました。
テクニカルタームについては、すべて田之頭さんの解説中のものを使用しています。
バラード第1番の骨格は、 ソナタ形式の変形「序奏・A1・B1・再提示的展開・C・B2・ 終結」として示すことができます。
以下、この順に楽譜を参照しながら見ていきましょう(白抜き数字が練習番号になります)。
「序奏(1-7小節)」は レチタティーヴォ的なもので、最低音域のCの力強いユニゾンに始まり、上昇ののち「C-G-B-As-G」(音形A)が現われます。
このレチタティーヴォ風の序奏に続く❶「A1(8-67小節)」では「主題Iの提示(8-36小節)」となります(スローワルツに よるメランコリックなアリア)。
主題Iの提示に続いては❷「音形Aの展開(36-67小節)」が始まります。「BB(オクターブ)-D-F-Es」(モティーフI)は、序奏の音形Aに基づいています。
A1 に続く❸「B1(68-93小節)」では、メノ・モッソ(ソット・ヴォーチェ)から「主題 IIの提示(68-82小節)」となります。
「2分音符+ 4分音符 」のG音の反復によって蓄えられた力がその次のEsへ、そこで凝縮された力で1オクターブ上のEsへ跳躍するとされています。
続いて、3連符を核とした「3連符モティーフの活用(82 – 92小節)」となります。
この部分の伴奏は「バルカロール(舟歌)の伴奏音形」を想起させます。「主題II の歌によって作り出された湖面の波が、静かに岸へと 打ち寄せてゆき、寄せては返す波動を形成する部分と言うことができる」(田之頭氏解説)。
次は、ソナタ形式の展開部に相当する 「再提示的展開(94-137小節)」です。
まず❹「主題 Iのエピソード的回帰(94-105小節)」。ここはイ短調で主題Iのスローワルツがエピソード風に回帰します。ここでは、低音部にイ短調の属音Eが2拍ワンセットで不気味な警鐘のように鳴り響きます。
切迫した緊張感の中で頂点のffに達して❺「主題IIの展開(106-125小節)」に進みます。主題IIはイ長調で、分厚い響きの中で大きな歌が現れます。
その歌は124小節のfffでクライマックスを迎え、一気に駆け下りて「モティーフI の自由な展開(125-137小節)」に突入します。
126小節(ピュウ・アニマート)からは❻「モティーフI」(音形A) の自由な展開で、次のCを想起させるものとなっています。
「C」は❼「ワルツ風エピソード(138-165小節)」 。主題IIと同じ変ホ長調で、右手の音の動きの中には音形Aが組み込まれています。これまでになかった軽やかに跳ねるような表情で頂点へと駆 け上がり、スケールで一気に下がって「B2」に入ります。
❽「B2(166-193小節)」は「主題IIの再提示(166-180小節)」と「3連符モティーフの再提示(180-193小節)」で構成されます。
主題IIの歌は今度は変ホ長調で表情を変えてで歌い上げられます。この部分の左手は4分音符から躍動的な8分音符となっています。その流れの中で「3連符モティーフ」が再提示されて「終結」に続きます。
「終結(194-264小節)」では、まず主調のト短調で❾「主題Iのエピ ソード的回帰」(194-207小節)」が現れます。ここでも「主題 Iのエピソード的回帰(94-105小節)」同様、低音部にト短調属音Dの不気味な警鐘)が鳴り響きます。
切迫した緊張感が増長する中、 2分の2拍子「プレ スト・コン・フオーコ」の➓「コーダ(208-264小節)」に突入します。
とても嫌な箇所ですが、最後は6 連符で半音階的に上昇したかと思いきや(246小節)、頂点から一気に最低音部まで下りていきます(250小節)が、今度は両手のスケールで上昇するというジェットコースター的展開を見せます。
そのあと、低音域でのト短調主和音が凝縮されて静かに響き(252小節)、次に主題I主要部の前半部分が左右のユニゾンで、休符に導かれた変形6連符が力強く奏されます。
そして、 アクセントを伴う2分音符G-B10度和音から、そのまま10度のスケールで上昇、先ほどと同じく低音域でのト短調主和音、次に1オクターブ上で主題I主要部の前半部分が左右のユニゾンで繰り返されます。
最後はfff ですべてが瓦解するかのように和音が 叩きつけられて終曲します。
まとめ
イメージしやすいように一覧にまとめてみました。
構成 | 小節 | 調性 | 練習番号 | |||
序奏 | 1 | 7 | 音形A | |||
A1 | 8 | 67 | 1⃣ | |||
主題Ⅰの提示 | 8 | 36 | ト短調 | 主題Ⅰ | ||
音形Aの展開 | 36 | 67 | ト短調 | モティーフⅠ | 2⃣ | |
B1 | 68 | 93 | 3⃣ | |||
主題Ⅱの提示 | 68 | 82 | 変ホ長調 | 主題Ⅱ | ||
3連符モティーフの活用 | 82 | 93 | 変ホ長調 | バルカロールの伴奏音形 | ||
再提示的展開 | 94 | 137 | 4⃣ | |||
主題Ⅰのエピソード的回帰 | 94 | 105 | イ短調 | 主題Ⅰ | ||
主題Ⅱの展開 | 106 | 125 | イ長調 | 主題Ⅱ | 5⃣ | |
モティーフⅠ自由な展開 | 125 | 137 | モティーフⅠ | 6⃣ | ||
C ワルツ風エピソード |
138 | 165 | 変ホ長調 | 音形A | 7⃣ | |
B2 | 166 | 193 | 8⃣ | |||
主題Ⅱの再提示 | 166 | 180 | 変ホ長調 | 主題Ⅱ | ||
3連符モティーフの再提示 | 180 | 193 | 変ホ長調 | ×バルカロール | ||
終結 | 194 | 264 | 9⃣ | |||
主題Ⅰのエピソード的回帰 | 194 | 207 | ト短調 | 主題Ⅰ | ||
コーダ | 208 | 264 | ト短調 | 主題Ⅰ | ⑩ |
整理したからといって良い演奏ができるとは限りませんが、良い演奏のためには整理は必要だと今更ながら思い直して、まとめてみました。
練習番号はエキエル版正本と本番用の楽譜の両方に付しています。
モティーフを強く意識するようになり、今まで「なんとなく」弾いて通り過ぎてしまっていた箇所が多かったことにも気づくことができました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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👋掰掰👋
コメント
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