8年前の2012年4月に僕自身再開後2回目の発表会を終えて、5月下旬から弾いたのがベートーヴェンのピアノソナタ30番でした。
そして、今年はベートーヴェンイヤーということで、何か弾きたいと思って選んだのが21番のワルトシュタイン。まさに今やっているところです。
今回は30番の練習の過程を簡単に振り返ってみたいと思います。そして、その最後のレッスンで録音したものを、恥ずかしながら公開させていただきました。
前回までのお話
第1回「ピアノを始めた経緯やその後の様子など」
第2回「レッスン再開後初めての発表会」
第3回「グランドピアノ購入と2回目の発表会」
30番を選んだ経緯
4月の発表会の本番を控えての緊張や、当時職場ではちょうど異動があり環境がガラッと変わったりと、僕自身の中で何らかの救いを求める気分があったようです。内田光子さんのベートーヴェン、30〜32番ソナタの演奏をよく聴いていました。
天に召したいとかそういうことではなく、身体全体を優しく包んでくれるような作品、そして演奏に惹かれていたのだろうと思います。そして、発表会が終わって一段落、気分も落ちついたところで、ホ長調の持つ暖かく柔らかな響きに「弾いてみたい」という気持ちになりました。
練習の過程
この曲に取り組んだのは2012年の5〜7月でした。
楽譜について
楽譜は春秋社の園田版を使いました。
「現代の近代的なピアノという楽器によって演奏するためには、どのようにベートーヴェンの「原典」を読み、それに基づく演奏表現のための詳細な指示、つまり演奏譜とでもいうべきもの、それによって最小限度の読譜解釈を認知することを、この版によって示すことができればと願った」というプロローグに興味を持ったという理由からです。僕程度が弾くのには関係ないんですけど。
野平一郎/ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番の演奏解釈
第3楽章にとりかかる頃に見つけた野平一郎さんの講義録。
これも僕が消化し切れないということはさておきとても有意でした。
http://www.ri.kunitachi.ac.jp/lvb/rep/nodaira03.pdf
第1楽章(第1楽章第1部)
冒頭はアウフタクトだったのに、結果的には1拍目として弾いてしまっていました(ちゃんと読譜しないで、耳コピで弾いていたという実態がバレバレです)。
この部分のフレージングや意識のポイントがわかっていませんでした。
五里霧中でなんとなく音が鳴っているという状態だったのが、先生の指導でなんとか形に。
第2楽章(第2楽章第2部)
メカニックなところがきちんと弾ききれなかったのは、自分のものにできていなかった証ですね。
さらに、ここでも読譜の甘さがありました。考えて弾いてないなぁ。
冒頭の左手のEのオクターブのところに「うるさい」と書いてあります。
左手の和音などをドカンドカンと弾いてしまうのも悪い癖です。
第3楽章(第2楽章)
いよいよ最終楽章になりました。
テーマと第1変奏
このテーマでも「左手小さく」と注意がありますね。
第2変奏
おっとっとっと、とリズムが転んでました。
そして、危なくなると走り始める悪い癖。
第3変奏
転ぶ左手、走る右手。
メトロノームと格闘の跡が残っています。
第4変奏
8/9の捉え方。ここも雰囲気でなんとなく弾いてしまっていました。
第5変奏
そんなに難しいとも見えなかったので、思いがけず苦戦したところです。
何度も「バッハをしっかりやっていれば」と思いました。
第6変奏
音が増えていき、そして消えていく。
ここは体力と精神力の勝負でした。
録音音源
レッスンの最終回は恒例の録音。
この曲は全楽章通してということになりました。
第3楽章の繰り返しは省略しています。
いざ先生の前で弾く、かつそれが録音ともなると、発表会でなくても緊張してしまいます。
冒頭から相当やらかしていますし、力が入って肩が上がっているのが目に見えるようなところも多々ありました。
あれほど憧れたホ長調の響きは「そんなはずではなかったのに」的な感じになってしまっていますね。
ただ、個人的には、練習の過程でこの作品から得たものは色んな意味で大きかったと振り返って思います。
そもそもお聴きいただくような代物ではないのですが、僕なりに足掻いた証として、恥を忍んで公開させていただきます。
21番ワルトシュタイン
そして、現在はこの第21番を練習しているところです。
ベートーヴェンイヤーなどとは滅相もなく、ハ長調の響きと第3楽章で陽の光が射し込んでくるかのような音楽を何とかして表現したいというも気持ちで、高望みでチャレンジしています。
ハ長調は真っ直ぐでとても清潔なイメージを持っています。
ベートーヴェンの交響曲でも実は1番の密かなファンですし、ピアノ協奏曲でももっとも好きなのは1番(尤も嫌いな曲はありませんが)なんです。
前回(2020年6月21日)レッスンで第1楽章の録音と第2、3楽章を初めてみていただきました。
まとめ
僕がピアノに限らず近現代のさまざまな音楽を聴いたり演奏した後に、戻ってきたくなるのがベートーヴェンの音楽です。
高校時代、吹奏楽ではさすがにベートーヴェンを演奏することはありませんでしたが、オーケストラで演奏するときには、ほかの部員も「ベートーヴェンだから」と燃えていたことを覚えています。合奏の場合には、ベートーヴェンの曲は下手でも何とか格好がつくという部分もあるのは間違いないところでもありますが。
2020年はせっかくのベートーヴェンイヤーなのに、中国製流行病の影響で、多くのリサイタルやコンサートが中止になっていることが、とても残念です。そんな中でも工夫して楽しんでいきたいものです。
コメント
私も30番はよく弾くのですが、第3楽章も難しいですが第1、第2楽章が意外に難しいですね。ベートーヴェンは音にするだけだったらショパンより易しいかも知れませんが、音楽自体がメロディで聴かせるというより「構造物」として聴かせるので、1音1音がしっかりとしたタッチで弾けているかという点がとても重要なように思います。モーツァルトのような微妙なタッチは要求されないですが、やはりロマン派とは違う難しさがありますね。
> galois225さま
お読みいただき、コメントまで頂戴してありがとうございます。
おっしゃる通り30番では、僕も第2楽章で結構苦労した記憶があります。
僕が決してできているわけではありませんが、ベートーヴェンを弾くときには、改めて色んな意味での「力」を求められているように感じています。
引続きよろしくお願いいたします。