【ピアノ/レッスン記20】青柳いづみこのMERDE!メルド日記

ピアノ
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「レッスン記19」では、ドビュッシーの「映像第1集」について、そして「水の映る影」のレッスンについてお話しました。

今回はまた、ドビュッシー研究の第一人者青柳いづみこさんの「MERDE!日記」書籍に寄り道します。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。

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前回までのお話

これまでの記事もご覧ください。

水に映る影〜ドビュッシー:映像第1集

青柳いづみこのMERDE!メルド日記

MERDE(メルド)はフランス語で「糞」を意味する女性名詞です(フランス語名詞の性別には特に意味はないそうです)。

ベルギーのブリュッセルで働いていたとき、この「MERDE」をよく耳にしました。それは何かうまくいかなかったときや、電話の向こうの相手に腹が立ったときに使っているようで「ああ、なるほど。クソ!ということなのか」と気づいた瞬間がありました(フランス語の授業で、こういう使い方は習いませんでした)。

この「クソ!」に限らず、同じシチュエーションで、同じ意味を持つ単語を発するのは、世界共通なんだと新しい発見をしたような気分になったものです。

この本のカバーの裏表紙には、このように書かれています。

怒って「メルド!」
幸運を祈って「メルド!」
トーキョウで「メルド!」
パリで「メルド!」
怒りの言葉でもあり、幸運を祈るときに投げかける言葉でもある。

この作品は青柳いづみこさんが2001年から2009年までホームページに掲載した日記の抜粋です。

(引用)「MERDE/メルド」は、フランス語で「糞ったれ」という意味です。このアクの強い下品な言葉を、フランス人は紳士淑女でさえ使います。「メルド」はまた、ここ一番という時に幸運をもたらしてくれる、縁起かつぎの言葉です。身の引きしまるような難関に立ち向かう時、「糞ったれ!」の強烈な一言が、絶大な勇気を与えてくれるのでしょう。ピアノと文筆の二つの世界で活動する青柳いづみこの日々は、「メルド!」と声をかけてほしい場面の連続です。読んでいただくうちに、青柳が「メルド!日記」と命名したことがお分かりいただけるかもしれません。(引用終)

9年間の日記の中から58のエッセイが収録されています。
本の帯には一部が抜粋されていますが、タイトルすべてを並べた方がイメージしやすいかと思います。

ホームページ立ち上げに向けて
新著を手にして
女の水、男の水
ステージ衣装

新阿佐ヶ谷会
二十五人のファム・ファタルたち
新人演奏会
海辺の宿
生・赤川次郎を見た!
竹島悠紀子さんのこと
鹿鳴館時代のピアノ
青山のブティック初体験
なかなか根づかないクラシッ音楽
年の瀬のてんてこまい

肩書
指輪
スタインウェイかベーゼンか、それが問題だ。
無駄に明るい五月晴れ
アルゲリッチー沖縄ーラローチャ(ⅰ)
アルゲリッチー沖縄ーラローチャ(ⅱ)
アルゲリッチー沖縄ーラローチャ(ⅲ)
新阿佐ヶ谷会・奥多摩編
東京湾岸花火大会
方向音痴のシチリア紀行(ⅰ)
方向音痴のシチリア紀行(ⅱ)
テレビに出てみました。

大変なんです‼︎
小さな大聴衆
「メロン三姉妹」と美智子さま
松田聖子体験
アテネ五輪 アナウンサーと解説者のビミョーな関係
プレイエルとベヒシュタイン
十四年越しのエッセイ集
有名にならない権利ークートラスとアルカン
音楽は疲労回復に役立つ!

吉田秀和さんの留守電
パリでメルド!トーキョウでメルド!(ⅰ)
パリでメルド!トーキョウでメルド!(ⅱ)
ジャズ・クラブ初体験
第七回別府アルゲリッチ音楽祭まで
ぴあ・ぴあ
ラジオ深夜便
“気“の出るCD?
「ぴあ・ぴあ」ただいま七刷中
セザンヌの足跡を追ってー南仏旅行記

七百五十ユーロの時計
美術とのコラボレーション

吉田秀和さんの文化勲章を祝う会
越境するということ
ビーイングの仕事
大田黒元雄のピアノ

ドビュッシー・イヤーの幕開け
母の死と<ドビュッシー・シリーズ ふたたび>
五月のメルド!
「天使のピアノ」のレコーディング
人生みたいだった<ドビュッシー・シリーズ>

パリ近郊のコンサート
受賞とテレビ出演

あとがき

青柳いづみこのMERDE!日記
青柳いづみこ著
東京創元社 2015年3月刊行
単行本:423ページ

青柳いづみこさんについて

青柳いづみこさんは東京杉並の阿佐ヶ谷のお生まれ、育ちです。

お祖父さまは仏文学者青柳瑞穂さんです。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京芸術大学音楽学部卒業。
フランスに留学し、国立マルセイユ音楽院首席卒業。
東京芸術大学大学院博士課程修了。
安川加壽子とピエール・バルビゼに師事。

大阪音楽大学教授、ドビュッシー研究家。

1989年 論文「ドビュッシーと世紀末の美学」により東京芸術大学より学術博士を授与(フランス音楽の分野で初めての博士号)
1990年 文化庁芸術祭賞受賞
1999年「翼のはえた指」で吉田秀和賞受賞
2001年「青柳瑞穂の生涯」で日本エッセイストクラブ賞受賞
2009年「六本指のゴルトベルグ」で講談社エッセイ賞受賞

2005年に刊行された「ピアニストが見たピアニスト 名演奏家の秘密とは」(白水社)が9刷ののち2010年に中公文庫、2007年刊行の「ピアニストは指先で考える
」(中央公論新社) は6刷ののち2011年に中公文庫重版、2008年刊行の「ボクたちクラシック つながり」(文春新書)は現在までに5刷。
刊行された著書は30冊、最新刊は「阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ」(平凡社)。

1980年 フランスより帰国、東京で初めてのリサイタル開催
1989〜2000年 「ドビュッシー・シリーズ」開催

これまでに9枚のCDが「レコード芸術」誌で特選盤。
リリースされたCDは18枚、DVDブック、CDブック各1冊、監修CD2枚。

まとめ

400ページを超える大部かつ二段組なので読み応えがありました。

「先生!それを書いちゃお仕舞いですよ」というきわどい内容のものも多くみられました。MERDEですからね。しかし、この本を読んだ限りでは、青柳先生はいつも「くそっ!」と思っておられるようにも見えなくもありません。

モノ書きピアニストの視点で、文筆業界と特にクラシックのCD業界の違いについての著述もありました。クラシックの世界は「買い取り」が当たり前なのは、構造不況業種だからなのか、はたまた師匠と弟子という徒弟関係が色濃く残っているからなのでしょうか。

この作品を読んで、日本の演奏家、特に若手の方のリサイタルに出かける機会が増えました。

また、そんな厳しい状況でも、新たな演奏の機会や広がりを求めて積極的に活動されている演奏家がおられることは、とても頼もしく、心強く思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋

コメント

  1. 聖弥 より:

    hirofumi様

    毎日興味深い記事を大変ありがとうございます。ブリュッセルにいらっしゃったのてすか!自分もベルギーフランス語圏に何度も滞在しましたが、メルド!は残念ながら聞いた記憶ありません(聞き取れなかったんでしょうね)。ドイツに住んでいた頃はドイツ人がよく「シャイセ!」(クソッタレ)と叫んでいました。タブン同じ意味ですね。

    しかしさすが青柳先生、とても面白そうな内容てんこ盛り!こんな砕けた親しみやすいエッセイから、研究者として格調高いご著書(想念のエクスプラトニズムとか」まで縦横無尽。ピアニストと文筆家でも凄いのに文筆家オンリーとして見ても振れ幅が凄いと感じます。あと、個人的には表紙の真紅と人形が気に入りました。絶対読みます!
    ありがとうございました

    • hirofumi24 より:

      > 聖弥さま

      いつもお読みいただき、また丁寧なコメントを投稿いただきありがとうございます。

      ブリュッセルにいたのは、ちょうど欧州統合真っ盛りの頃で、ベルリンの壁の崩壊もあちらで見ていました。
      日本はバブル全盛期で、ベルギーは静かなのに、東京では訳のわからないくらいの数字が上がっていて驚いていたことを思い出します。
      ドイツはお隣の国なのに(リエージュ経由でケルンに行く特急が走っていました。ギュスターヴ・エッフェルとかパルジファルという名前のついたフランス国鉄の列車もありました)、残念ながらフランクフルトへ一度業務出張しただけでした。感謝祭の頃で滅茶苦茶寒かったことを覚えています。

      ドイツでもやはり「糞!」と言うんですね。こんなとき、言葉は面白いし不思議なものだと思います。

      引き続きよろしくお願いいたします。

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