【ピアノ/読書】マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法

ピアノ
スポンサーリンク

マルタ・アルゲリッチといえば、有り体にいうと「天才ピアニスト」、いやそれでは足りないから「鍵盤の女王」とでも呼ぶべきなのでしょうか。適切な表現が見つかりませんが、彼女の存在の大きさは疑いもないところだと思います。

僕も子供の頃から彼女の演奏に魅了され、なれるわけでもないのに憧れて育ちました。それが、僕も歳をとったのでしょうか、ある日拒絶反応のようなものを示すようになり、彼女の演奏をまったく聴かなくなった時期がありました。

そんな僕を彼女が好きだった僕に戻してくれたのが、アルゲリッチの伝記ともいえるこの作品でした。
世に出てもう10年近く経ってしまったのですが、簡単に振り返ってみたいと思います。

最後までよろしくお願いいたします。

スポンサーリンク

マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法

Amazonの解説には以下の通り記載されています。

本書は世界的なピアニスト、マルタ・アルゲリッチについての、おそらく世界初の伝記である。

アルゲリッチ本人に密着取材し、彼女の生地ブエノス・アイレスにおける子ども時代から、彼女の受けたピアノ教育、グルダ、ミケランジェリ、ホロヴィッツ、ポゴレリッチら個性的な名ピアニストとの出会い、1965年ショパン・コンクールでのセンセーショナルな優勝、3度の結婚生活と、父親の違う3人の娘のこと、闘病生活、日本のこと(別府音楽祭)などが非常にオープンに綴られていく。

類い希な才能を持ちながら、人前で弾くことを苦にするあまり、コンサートをキャンセルしてしまうことも多かったアルゲリッチ。
そのさえ渡るピアノの蔭にあった苦悩のひとつひとつが浮き彫りになり、いまや大巨匠の位置にあるピアニストのあたたかな人間性が胸に迫ってくる一冊である。
(引用終わり)

マルタ・アルゲリッチ
子供と魔法
オリヴィエ・ベラミー 著/藤本優子 訳
音楽之友社刊
2011年5月発行

(音楽之友社HPより引用)
家族のルーツ、神童時代、グルダとの出会い、輝かしいデビュー、初めてのレコーディング、キャリアの中断、恋愛・結婚・出産、ショパン・コンクール、子育て、闘病、日本と祖国、そして現在…迫真の伝記に明かされる天才ピアニストの実像。日本語版オリジナル完全ディスコグラフィー付

著者/訳者について

2011年5月31日第一刷当時、以下のような記載がありました。

著者:オリヴィエ・ベラミー

1961年マルセイユ生まれのジャーナリスト。
フランスの音楽専門「ラジオ・クラシック」局レギュラー番組を担当したほか、「パリジャン」紙や「クラシカ」誌にも寄稿。
テレビのドキュメンタリー番組も多数(ピエール・ブーレーズ、ロン・ティボー・コンクールのドキュメンタリーなど)手がけている。

訳者:藤本裕子

1964年東京都生まれ。
桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、フランスへ8年間留学。パリ国立高等音楽院ピアノ科卒。
翻訳家・通訳・ライターとして活動。

本書の構成

序章
01 ブエノスアイレス 子どもの庭
02 ラバイエ通り ヴィルトゥオーソの養成
03 ウィーン グルダとの魔法の修行
04 ボルツァーノからジュネーヴへ 火の試練
05 ハンブルク ヨーロッパ・デビュー
06 ハノーファー デビュー盤
07 ベルン 軌道の中断
08 モンカリエリ ミケランジェリの静寂
09 ニューヨーク ホロヴィッツを探して
10 ジュネーヴからブリュッセルへ 母親
11 ワルシャワ ショパン・コンクール 一九六五年
12 ロンドン 大恋愛
13 モンテビデオ 「突風」
14 リオデジャネイロ 恋人たち
15 ジュネーヴ 四散
16 ワルシャワ その二 ポゴレリッチ事件
17 モスクワ ロシアンな友情とファニータの死
18 ブリュッセル ピアニストたちの通り
19 サンタモニカ ジョン・ウェイン研究所
20 別府 日本への想い
21 アルゼンチン 帰国
22 パリ 子供の情景
謝辞
訳者あとがき

マルタ・アルゲリッチ・ディスコグラフィー
〔Ⅰ〕録音&映像収録順
〔Ⅱ〕作曲家(アルファベット順)&作品別
原書ディスコグラフィーへの解説(抜粋)
年譜

読後感など

まず、本書は年代を追っていく構成にはなっていますが、そのなかで話があちこちに飛ぶので相応の覚悟が必要でした。

さて、アルゲリッチの放つあのオーラはどこから来るのか、それが何となくわかりました。

ブリュッセルの自宅に集う(というか住んでいる)芸術家の卵たちとの交流、その仲間たちとのコンサートなど。
奔放なイメージがつきまとうのに彼女の周りには常に人がいるのですね。
彼女の癌の手術の際には海老彰子さんがご自分の仕事を1ヶ月キャンセルして付き添ったとのこと。
術後の療養中にはラローチャもお見舞いに来られたそうです。

そして、主催音楽祭がなぜ別府、いや日本なのか、その答えもこの本にありました。

彼女にとっては世界は「日本とそれ以外」なのだそうです。
ほかの勲章は鼻で笑う彼女も高松宮殿下記念世界文化賞や旭日小綬章を贈られたときには感極まっていたと。
美智子皇后さま(当時)と連弾したこともあるそうです。
良い意味で居心地が良いのでしょうね。

また、謎の部分がこちらでした。

(本文より引用)
三島由紀夫の国の神秘、その祭式、洗練に彼女は魅せられている。西洋ブルジョワのしきたりにはいらだちながらも、島国日本で先祖伝来の法には喜んで従う。日本人の性質には心を奪われる。彼女は日本人のことを知的で鋭敏だと思い、何より彼らの婉曲な表現の流儀を好んでいる。日本人の話術に対しては、つねに暗号解読にような解釈が必要だ。マルタは日本人たちが入念にヴェールでぼかした言葉の裏を読み解くことができる自分を嬉しく、そしておそらくは誇らしく思っている(262ページ)

アルゲリッチにとって三島由紀夫という作家はどのような存在だったのでしょうね。

さて、彼女の3人のお嬢さんはそれぞれ、ロバート・チェン、デュトワ、コヴァセビッチとそれぞれお父さんが異なります。
それでもお孫さんも含めて彼女は幸せに包まれているのは何とも羨ましいことです。

また、「私はアマチュア」とも言っています。
確かにシューマンとは「合う」けれどブラームスはイマイチとか、ショパンにしても〇〇全集的なものがあまりありません。
おそらく商業ベースに振り回されたくないという意味なのかなと思いますが。

デュオ・クロムランクとも親しかったことはここで初めて知りました。
同じブリュッセル住まいだったからです当然といえばそれまでなのですが。
僕ももう少し遅い時期にブリュッセルにいたら、グラン・サブロンで彼女とすれ違っていたかも知れないと妄想したりしました。

巻末にはディスコグラフィーが整理されています。

僕が初めて聴いた彼女の演奏は、ショパンコンクールのライヴ・レコードのエチュード作品10-1ハ長調でした。
圧倒的な存在感のある演奏で、衝撃を受けたのですが、この曲の録音はこれっきり。
コンクールだから仕方なしに弾いたのかも知れませんね。

まとめ

チケットを持ってコンサートホールの前で並んでいても「本当に来てるのかな」という会話が真剣に交わされたりして「自分勝手な人」というイメージがその演奏にまで影響が及んだことが、おそらく彼女の演奏から僕が遠ざかった原因だったように思っています。

そんなイメージを覆してくれたのがこの自伝ともいえるこの作品でした。今や「神」としか思っていないのだから僕もいい加減なものですね。

余談ですが、巻末付録のディスコグラフィーはとてもよく整理されています。
レパートリーが必ずしも広くはなく、同じ曲の録音がいくつも存在するのでとても助けになると思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋

コメント

  1. […] 音楽徒然草【ピアノ/読書】マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法https://hirofumi2… […]

タイトルとURLをコピーしました