最近のクラシックのピアノリサイタルでは、アンコールの場面でiPadを持って袖から出てくるピアニストの方も珍しくなくなりました。鳴り止まない拍手に応えるために、iPadの中から次の曲を探すこともありますよね。また、ファンクラブなどでサロンコンサートを開催するときに、iPadを使うことが前提になっていることもあります。
小さい頃から、曲がある程度仕上がってくると先生から「それじゃ、暗譜ね」と指示されて、それで弾ければ一旦上がり(○をもらう)でしたし、発表会では暗譜することが当然だった状況からは変化してきているように感じることも多いです。暗譜の是非云々ではなく、そういう状況になっているのなら活用しない手はないだろうと、僕は積極的に採り入れています。
暗譜は必要ないということではなく、ステージで楽譜がない状態で弾くことが必ずしもマストではないでしょうということで(ただ、オーケストラや吹奏楽では楽譜を見ながら本番で演奏するのに、ピアノはなぜ暗譜なのかというそもそもの疑問は解消していませんが)、僕のiPad活用法、PDF化の方法とiPadでの譜めくりなどについてお話ししていきます。
楽譜をPDF化する
PDF化した楽譜はPiascoreで見る
Piascoreはこちらから:
見るだけではなく、書込みもできますし、自動譜めくりしてくれる機能や、楽譜の並べ替えもできます。また、Dropboxに保存したPDFを読み込むことも、このアプリの中で無料ダウンロードもできたりします。
サイトで直接ダウンロードする
最近ではダウンロードでPDF楽譜が販売するサイトも多くありますし、著作権保護期間が満了した作品については「IMSLP」というサイトで無料ダウンロードすることができます。
IMSLPはこちらから:https://imslp.org/wiki/Main_Page
1.IMSLPのトップページ(上のURL)にアクセスする
2.作曲家名で検索する
3.検索結果から対象の作曲家名を選ぶ
4.作品一覧の中からダウンロードする曲を選ぶ
5.ダウンロードする楽譜(出版社、校訂者、アレンジなどによって複数の版があります)を選ぶ
6.楽譜をダウンロードする
特に校訂の点で、レッスンで使ったり、曲そのものを一から勉強するのには向いていませんので、例えばステージに持っていくのは難しいものがあると思います。ただ、色んな曲を眺めるのにはとても便利なサイトだと思います。
手持ちの楽譜をPDF化する
最もお手軽なのはプリンターのスキャン機能を使うことですよね。
ただ、分厚い楽譜をセットするのは難度が高いですし、僕の使っている(超古典的な)エプソンの機種では一枚ずつ別のPDFに保存されるので、別途統合の作業が必要だったりして、結局面倒だったりします。
次に、しばらく前まで使っていたのがAdobe scanです。基本的には楽譜の画像を撮るのですが、必要な部分を自動的に検出してくれますが、影ができたり、歪んだりと良くも悪くもそのままの姿で、修正をしてくれないので、撮影には工夫が必要なのが難点でした。
Adobe scanはこちらから:
そして、ここまでの欠点を補ってくれて、超便利なのがEvernote scannableで、簡単にPDFを作ることができます。
Evernote scannableはこちらから:
アプリを起動して、スキャンしたい楽譜を撮影します(対象を探し出して自動的に撮影してくれます、手動も可能)。
撮影したら、自動的に必要な修正を施してくれます。この楽譜も何の気なしにお任せで写したものです。
保存する前に保存の形式を「PDF」にしておきます(赤の丸印の下のところ)。
そして、このPDFをPiascoreに直接コピーします。
コピーできました(最上段左の「シンフォニア」です)。
譜めくりはどうする?
僕の使っている方法は3つです。
iPadに直接タッチ
以前、ユジャ・ワンがリサイタルのアンコールで、ちょいちょいっと本当に上手にiPadにタッチして譜めくりをしていました。カプースチン のトッカティーナでその技を使っていたので、何をやっても上手いなと感心したことを覚えています。
慣れればうまくめくることができるようになりますが、大きな曲の場合には紙の楽譜同様の問題があります。
Piascoreのジェスチャー譜めくりを使う
10年くらい前、首を振ると譜めくりをする「譜めくりジェスチャー」という仕組みがあったのですが、アプリのバージョンアップの過程で対応しないようになってしまいました。数年前、新たに「譜めくりジェスチャー2」が発表されています。
ただし、対応しているのはiPhoneXと最新のiPad Proだけなのが残念なところです。僕は楽譜を見るために12.9インチのiPad Proを購入したので、たまたま試すことができました。
この右上にある「ジェスチャー」(赤で囲んだところ)の絵マークをタッチして、ジェスチャーを起動します。
右上の青いマークが赤に変わって、動作可能になっています。
公式発表では、色んなジェスチャーに対応してくれることになっています。
ウィンク
眉毛アップ
笑顔
口を開ける
舌を出す
口を突き出す
下唇を噛む
口を曲げる
画面の一部(右下角など)を見る
ウインクはちゃんと反応してくれて、譜めくりができました。ほかのジェスチャーについては、僕のやり方がまずいのか、感度が鈍くて反応したりしなかったりでした。精度が上がってくると、かなり使えそうです。
初代のジェスチャーの時代、江口玲さんがサロンコンサートで首振りによる譜めくりをなさっていたように、2代目もなれば良いなと思います。
iRig BlueTurnを使う
足踏み式の譜めくりマシンです。
箱から取り出すと、12㌢✖️8㌢のコンパクトなサイズで、左右に二つのボタンがあって、左を踏むとページ戻り、右を踏むとページが進みます。
iPadとのペアリングは、iRig BlueTurnのどちらかのボタンを押しながら裏側にあるon/offスイッチをonにすると、左右のボタンが青く点滅するので、左のボタンを長押してペアリングモードにします。
次はiPadの設定ですが「Bluetooth」に表示された「iRig BlueTurn」をタップして、ペアリングします。
このツールはまず踏み損なうことはありませんし、譜めくりとしては最強だと思います。僕も前回の発表会のアンサンブルで使いました。大成功でめでたしめでたし!なのですが…
右足はダンパーペダルを踏むので、このツールの足踏みは通常左足で行いますが、ドビュッシーの映像の「水に映る影」のようにソフトペダルを使う場合には左足も使えません。実はこのツールは最初「映像」第1集を演奏会で弾いたときに使おうとしたのですが、どうやっても無理だったので、断念せざるを得ませんでした。
まとめ
長くなってしまいましたが、楽譜を見るアプリはpiascore、PDFスキャンはEvernote scannableが最強、譜めくりはソフトペダルやソステヌートペダルを使わないのなら「iRig BlueTurn」が便利、ジェスチャーは今後の精度アップに期待で進化途上といったところでしょうか。
最初から完璧なものはありませんので、みんなでどんどん使ってリクエストしていけば良いんじゃないでしょうか。紙の楽譜の方が「やってる感」はありますが、いつまでもパピルスというのもなぁと思います。
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