毎年秋恒例の上野の東京文化会館の岡田博美さんのリサイタルが開催されました。
リサイタルの模様と合わせて、いまさらながらプロフィールやディスコグラフィについてお話していきます。また、今回のプログラムのメインともいえるベートーヴェンのピアノソナタの演奏記録についてもまとめてみました。
最後までよろしくお願いいたします。
リサイタルの概要
日時:2020年11月21日(土)19:00〜(18:15開場)
場所:東京文化会館 小ホール
〈プログラム〉
バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816
ベートーヴェン:ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57「熱情」
シューベルト:楽興の時 D.780
ベートーヴェン:ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
リサイタルの模様
いつもならプログラムの選定理由などについて、岡田さんのコメントがプログラムに掲載されているのですが、今回はありませんでした。
単なる個人的な想像ですが、ベートーヴェンイヤーということでメインを据えて、バッハの洗練されたバロックのフランス組曲、そして古典派の集大成として(そして次の時代をも感じさせる)「熱情」、後半は年齢は二回り以上若いもののベートーヴェンと同時代を生きたシューベルトのロマンティックな作品とベートーヴェン自身のピアノ作品の極みとも言うべき31番のソナタという構成になったのかと思いながら聴きました。
挨拶をされて腰掛けたと思ったらいきなり弾き始める、といういつものスタイルで聴こえてくるバッハはペダルも加えつつ豊かな響きで、瑞々しくそしてチャーミングな演奏でした。後半最初のシューベルトも淡々とした歩みの中から豊かな叙情性が感じられ、とても魅力的でした。
そして、2曲のベートーヴェンのソナタ。
岡田さんのベートーヴェンの演奏からは、今回の作品に限らず、堅牢な土台とフレームの中で美しいサウンドと豊富なパレットを活かした色彩感が溢れてきます。そこに止まらず、飄々かつ淡々とした演奏ぶりの中から次々に紡がれる物語は、自然と僕の心の中に浸透していき、それは感動に変化していきました。本当に素敵な演奏でした。
アンコールは「エリーゼのために」とサン=サーンスの「左手のための練習曲」からブーレで、最後の最後にこんな鮮やかな演奏を聴いてしまうとなかなかホールからは立ち去り難いものがありました。
サイン会はありませんでしたが、ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」、シューマンの「子供の情景」と「クライスレリアーナ」が収録されたアルバムが先行発売されていました。近く販売されるようです(カメラータ、3,080円(税込))。
岡田博美さんのプロフィール
岡田博美さんは富山県出身です。
安藤仁一郎、森安芳樹、マリア・クルチオの各氏に師事されました。
1979年 第48回日本音楽コンクール第1位優勝(桐朋学園大学在学中)
(桐朋学園大学首席卒業)
1982年 第28回マリア・カナルス国際コンクール第1位(スペイン音楽解釈特別賞)
1983年 第2回日本国際音楽コンクールピアノ部門第1位
1984年 第2回プレトリア国際コンクールにて第1位(リサイタル賞を併せて受賞)
(1984年〜 ロンドン在住)
1985年 ロンドンデビューリサイタル
「まさしく来るべきスター」(デイリー・テレグラフ紙)
「図抜けて確かなテクニックで想像力に情熱的な音楽性」(タイムズ紙)
1993年 ショパンエチュード全曲演奏で第20回日本ショパン協会賞受賞
1997年 ロンドン・ウィグモアホールでリストの超絶技巧練習曲全曲を含むシリーズ・リサイタル開催
2004年〜「フランス・プラス」シリーズを10年開催
デュカス、フローラン・シュミット、ルーセルなどの隠れた名曲を数多く紹介
オーケストラとの協演も多く、また 室内楽の分野にも注力されています
2015年4月より桐朋学園大学院大学(富山県富山市)の教授に就任されました。
おもなディスコグラフィ
CDはカメラータを始め、日本コロムビア、ナクソスなどから発売されています。
ベートーヴェン:「ハンマークラヴィーア」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番 変ロ長調 作品106
バッハ:パルティータ第2番ハ短調 BWV826
録音:1996年4月19日 紀尾井ホール(ライブ録音)
ブラームス:ピアノ・ソナタ第1番
ブラームス:
ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 作品1
ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 作品24
6つのピアノ小品 作品118
録音:1996年7月19日 紀尾井ホール(ライブ録音)
ドビュッシー:12の練習曲
ドビュッシー:12の練習曲
ガブリエル・ピエルネ:パッサカリア作品25
ポール・デュカス:ラモーの主題による変奏曲、間奏曲と終曲
録音:1997年5月9日 紀尾井ホール(ライブ録音)
「パヴァーヌ」~アンコール・セレクションズ
バッハ/ヘス編:コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
ショパン:ノクターン 嬰ヘ長調 作品15-2
ショパン:エチュード イ短調 作品25-11「木枯し」
シャブリエ:牧歌~「絵画的小品集」より
サン=サーンス:ブーレ 作品135-4、5~「左手のための6つのエチュード」より
フォーレ:パヴァーヌ 作品50
アルベニス:プレリュード 作品232-1~組曲「スペインの歌」より
グラナドス:オリエンタル 作品37-2~「スペイン舞曲集」より
リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
リャードフ:音楽玉手箱 作品32
シマノフスキ:マズレク~「4つのポーランド舞曲」より、クラコヴィアク~「4つのポーランド舞曲」より
ルトスワフスキ:4本指のエクササイズ~「子供のための3つの小品」より
ウェーベルン:子供のための小品
ブラームス/ブゾーニ編:一輪の薔薇が咲きて 作品122-8~「オルガンのための11のコラール・プレリュード」より、おおこの世よ、我は汝より去らねばならぬ 作品122-11~「オルガンのための11のコラール・プレリュード」より
録音:2000年6月12日ウィーン スタジオ・バウムガルテン
アルベニス:イベリア全曲
アルベニス:組曲「イベリア」全曲
録音:1998年5月15日紀尾井ホール(ライブ録音)
ショパン:練習曲全集
練習曲 作品10
3つの新しい練習曲
練習曲 作品25
録音:2005年4月18-20日 スタジオ・バウムガルテン(ウィーン)
矢代秋雄&デュティユー:ピアノのためのソナタ
デュティユー:
3つのプレリュード
ピアノのためのソナタ
矢代秋雄:
ソナティネ
ノクチュルヌ
ピアノのためのソナタ
夢の舟
トッパンホール ライヴシリーズCD Vol.8 Beethoven 岡田博美
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第12番 変イ長調 Op.26 「葬送」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op.109
ベートーヴェン:ディアベリの主題による33の変奏曲 ハ長調 Op.120
シューベルト:楽興の時 第3番 ヘ短調 D780-3 O.94-3(アンコール)
ふらんすplus~岡田博美ライヴ・セレクション 2003-2011
プーランク:「フランス組曲」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番ハ長調op53「ワルトシュタイン」
ドビュッシー:プレリュード第2巻より「霧」「花火」
ラヴェル:「亡き王女のためのバヴァーヌ」
サン=サーンス:ワルツ形式のエチュードop52の6
ショパン:ノクターン第20番英ハ短調 遺作
フローレンス・シュミット:「幻影」op70
フォーレ:「シシリエンヌ」op78
ルーセル:組曲op14
サティ:ジムノペディ第1番
リャプノフ:「超絶技巧練習曲」op11 第10番「レスギンカ」
ミヨー:「家庭のミューズ」op245 第10番「猫」
ミヨー:「ブラジルの思い出」op67 第1集
プーランク:子どものための小品「村人たち」
シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
アルベニス:「ナバーラ」
ショパン&シューマン:ピアノ協奏曲集~6人のオルガン奏者による伴奏版
フレデリック・ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21/ピアノ:岡田博美
ロベルト・シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54/ピアノ:コンスタンティーノ・カテーナ
録音:2012年5月12~17日 サン・ピエトロ教会(トラバーニ/イタリア)
指揮/オルガン/トランスクリプション:クラウディオ・ブリツィ
ベートーヴェン:ワルトシュタイン・テンペスト
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」
ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31-2「テンペスト」
ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109
録音:2017年11月ほか 東京文化会館 小ホール(ライヴ録音)Spotifyで聴くことができます
バッハ:ゴルトベルク変奏曲
バッハ:ゴルトベルク変奏曲
録音:2008年2月 トッパンホール(ライヴ録音)Spotifyで聴くことができます
ベートーヴェンのピアノソナタの演奏記録
岡田さんのウェブサイトから日本で演奏されたものをピックアップしてみました。
2000年10月26日 紀尾井ホール「岡田博美のミクロコスモス」第11回
ソナタ第30番ホ長調Op.109、ソナタ第31番変イ長調Op.110、ソナタ第32番ハ短調Op.111
2002年9月13日 紀尾井ホール「岡田博美のミクロコスモス」最終回
ソナタ第26番変ホ長調Op.81a「告別」、ソナタ第28番イ長調Op.101
2003年9月22日 東京国立博物館平成館「博物館コンサート」ほか
ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27の2「月光」
2004年1月11日 鳥取県日野町根雨
ソナタ第23番ヘ短調Op.57「熱情」
2010年11月13日 東京文化会館小ホール ふらんす plus vol.8ほか
ソナタ第21番ハ長調Op.53「ワルトシュタイン」
2011年4月21日 トッパンホール主催コンサート 岡田博美×ディアベリ変奏曲
ソナタ第12番変イ長調 Op.26「葬送」、ソナタ第30番ホ長調 Op.109
2013年5月31日 東京目黒Q.E.D.CLUB
ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27の2「月光」
2016年11月12日 東京文化会館小ホール ほか
ソナタ第30番ホ長調Op.109
2017年11月25日 東京文化会館小ホール ほか
ソナタ第21番ハ長調Op.53「ワルトシュタイン」
2019年11月9日 東京文化会館小ホール
ソナタ第4番変ホ長調Op.7
2019年11月30日 名古屋平松内科クリニック
ソナタ第14番嬰ハ短調Op.27の2「月光」
ワルトシュタインと30番が多く演奏されているようですが、意外と月光も演奏されています。
この記録上では、熱情は2004年、31番のソナタは2000年以来の演奏ということになります。
まとめ
中国ウイルス騒ぎが再燃した影響もあってか、毎回満員の文化会館小ホールも半数ほどのお客さまでした。それでもいつもの暖かい雰囲気に包まれているのは、岡田さんのリサイタルならではだと思います。
あっという間で季節感を感じることも少ない一年間でしたが、岡田さんのリサイタルは晩秋を告げる恒例のイベントです。開催されたこと、そして素敵な音楽に浸ることができたことに感謝したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
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