いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
務川さんのサントリーホールでのオールショパンプログラムリサイタルが開催されました(「5.務川慧悟 ピアノ・リサイタル2021」をご覧ください)。当日の模様をお話しています。
また、2022年年明けにオンライン配信で開催されたコンサート「仏蘭西日記」の模様を追記しました(「6. ROHM CLASSIC SPECIAL トーク&コンサート」をご覧ください)。
些か旧聞に属する感もありますが、務川さんが第3位、阪田さんが第4位という素晴らしい結果で終了したエリザベート王妃国際コンクールのピアノ部門については別記事にまとめて、簡単な感想も記載させていただいています。
エリザベート王妃国際コンクール
エリザベートのまとめ記事はこちらからぜひご覧ください。
(入賞者コンサートのプログラムも記載しています)
務川さんの演奏について
別のSNSで友だち限定で以下のように話しました。
夜中に少しだけ聴いたら寝るつもりがそうはさせてくれず、翌金曜日は一日眠くて仕方なかった…(略)こちら(リンク先)はエリザベートのセミファイナルの前半のモーツァルトのコンチェルトです。この最後のコンチェルト27番を選んだのは彼だけですが、ホントに美しくて暖かい演奏でコンクールを忘れてしまいました。オケの指揮はブラレイさんで、務川さんのコンヴァト時代のピアノの先生でした。ブラレイさんはエリザベートピアノ部門の覇者です。
務川さんのエリザベートセミファイナル後半のリサイタル。これももはやホントのリサイタルでした。最初の曲は参加者全員が弾く課題曲、新曲。2曲めはラモー、浜松で弾いて今や彼の代名詞ともいえるかも。ピアノ弾いてた人はやったことある人もいるでしょう。ラフマニノフのコレルリ変奏曲とショスタコーヴィッチの前奏曲とフーガは昨年の浜離宮のリサイタルのプログラム、あのときも割れんばかりの拍手でした。今回も凄みのある演奏で興奮で終わっても寝させてくれませんでした。審査員の拍手も、あれはオーディエンスの拍手だと感じました。今日深夜でセミファイナルがすべて終了して、本選進出者が決まります。
エリザベート本選に向けたコンテスタントの隔離生活
エリザベート本選では新曲の課題曲を含め2曲を演奏することになっています。
そのため、以下の通り本選の演奏まで隔離生活が義務づけられています。
ファイナリストは1日1人ずつ、演奏順にエリザベート王妃音楽院へ移動、未公開の課題曲の楽譜を受領
ファイナル(本選)は1人目がエリザベート音楽院入館後1週間後に開始、入館後演奏まで外部とのコミュニケーションは禁止
務川さんは「お城生活に行ってきます」と呟いておられます。
携帯も取り上げられるとのことで、厳格な隔離生活のようです。
それでは…ファイナル前8日間のお城生活に行ってきます。ケータイ等取り上げられ外界と遮断された生活というのを、かねてから少し夢見たりなどしていましたから笑、忘れられない時間になるだろうと楽しみです、ワイン4本コーヒー3袋と昨日たまたま目に飛び込んで来て買ったハリポタもきちんと持って… pic.twitter.com/Pe2idDHNVQ
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) May 18, 2021
コンクールのインスタグラムでは「お城」の映像が公開されていました。
見たところ、コンテスタントはベッドルームのロフトつき、グランドピアノのある個室で生活するようです。
ファイナルを目前に控え、ファイナリストが外界遮断生活に勢揃いしました。
2021年5月22日、マティルド王妃とのオンライン謁見が実施されました。
エリザベート本選最終日を前にした務川さんの振り返り
本選を控えて過ごした外界遮断生活を振り返って、務川さんが次のツイートをなさっていました。
シャペルで過ごした9日間の日々を今後一生忘れることがないと思う。ネット無し、沢山の自然に囲まれて…という点も勿論そうなのだけど、何よりも 人 で、他のファイナリスト達は皆、やはり音楽家だった。博識で、沢山の音楽を頭の中に持っていて、それでいて自然体で皆優しかった。ナチュラルに音楽家
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) May 28, 2021
である彼らの私生活に触れ、一緒に苦労し、食後に弾き遊びして、受けた刺激、ずっと忘れないことと思う。今後僕が音楽家として生きてゆくことができるのだとしたら、この体験は明らかに原点の一つとなるだろう、というほどに、僕の意識を変えてくれる日々だった。それで、このコンクールを
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) May 28, 2021
受けて本当によかった…追記になりますが(こっちが本題であるべきか⁉︎)、ファイナルでの演奏を聴いてくださった方々へ。心から、ありがとうございました!!☺️☺️☺️
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) May 28, 2021
ほかのファイナリストとの触れ合い、受けた刺激など、かけがいのない日々を過ごされたようです。
本選の演奏を終えたときに見せた、少し照れながらも清々しい表情の意味するところはこういうことだったのかと個人的には感じました。
コンクール実況録音CDについて
4枚組のボックスで、本選とセミファイナルの演奏から抜粋して収録されています。
CD1
1-4 ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調op.83 – Jonathan Fournel
5 マントヴァーニ:D’un jardin féérique – Sergei Redkin
6 ジョドロフスキ: Nocturne – Jonathan Fournel
CD2
1-3 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調op.30 – Sergei Redkin
4-7 シューマン:管弦楽のない協奏曲(ピアノソナタ第3番)ヘ短調op.14 – Dmitry Sin
8 ショスタコーヴィッチ:前奏曲とフーガ変ニ長調op.87/15 – 務川彗悟
CD3
1-3 モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調KV488 – Vitaly Starikov
4-6 モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番変ロ長調KV595 – 務川彗悟
7 ラモー:ガヴォットと6つのドゥーブル – 務川彗悟
CD4
1 リスト:ソナタロ短調 – 阪田知樹
2 ブラームス:ヘンデルの主題による変奏曲とフーガop.24 – Jonathan Fournel
3 ショパン:夜想曲第17番ロ長調op.62/1 – Jonathan Fournel
4 ドビュッシー:レントより遅く – Sergei Redkin
Belgian National Orchestra – Hugh Wolff, conductor (CD1: 1-5 / CD2: 1-3)
Orchestre Royal de Chambre de Wallonie – Frank Braley, conductor (CD3: 1-6)
Spotifyでも
2021年6月28日に確認したところ、すべてのCD収録曲をSpotifyで聴くことができるようになっていました。
務川慧悟 ピアノ・リサイタル2021
日時:2021年12月18日 14:00開演
場所:サントリーホール 大ホール
オールショパンプログラム
ドイツ民謡『スイスの少年』による変奏曲 ホ長調
ノクターン 遺作 嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」
ワルツ 遺作 ホ短調
4つのマズルカ Op.24
スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39
即興曲 第3番 変ト長調 Op.51
舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
好きな作曲家はたくさんいるけれども、最も共感する作曲家はと訊かれたらショパンと答えるだろうとご本人のおっしゃる通り、ショパンの作品に自然に向き合って、小品から第3スケルツォ、そして第3ソナタのような大作に至るまで、その心持ち(それがおそらく表現したいこと?)が聴き手の心の中にも自然に溶け込んでくる演奏でした。
いつもながらとてもきめ細かくて芯のあるクリアな響きで「繊細」なのかも知れませんが、歌はとても分厚い響きで艶やかでした。
ショパコンで個性溢れる演奏、表現が適切かどうかはわかりませんが大向こうを唸らす演奏を多く聴いたような気がすることもあり、今日のような自然に向き合える演奏はなお一層素敵で感動的でした。
素晴らしいリサイタルでした。
アンコールはショパン晩年の作品「2つのブーレ」とバッハのフランス組曲第5番のサラバンドでした。
務川さんのバッハはやはり素晴らしいです。
インタビュー(2021/10/25)はこちらから:https://spice.eplus.jp/articles/293824
直前の務川さんからのメッセージ動画です。
完売御礼。気合を入れて…と言いたくなるところだけど、"気合い"という言葉とはきっと無縁な明日のショパンの楽曲たち。でも今の心地を強いて一言で表すなら…うん、楽しみだ!!#ショパン #リサイタル #サントリーホール pic.twitter.com/ptVG0tm0Qu
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) December 17, 2021
ショパンと務川さんが結びつきにくいとのコメントがありますが、バラ4の素晴らしい演奏動画公開されていますし、サロンでのリサイタルでエチュード作品10全曲演奏などもなさっているので、個人的にはちょっと違うのかも知れないと思わないでもありません。
また、2021年10月には紀尾井ホールでコンサートが開催されました。
東京21世紀管弦楽団 お昼のコンサート in 紀尾井
日時:2021/10/3(日)14:00開演(13:30開場)
場所:紀尾井ホール
ピアノ:務川慧悟
北原幸男指揮 東京21世紀管弦楽団
オール・ショパン・プログラム
ピアノ協奏曲第1番ホ短調 op.21
ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 op.11
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ op.22
サントリーホールリサイタルは予定通り開催
サントリーホール、愛知県の知立リリアのリサイタルともに予定通り実施されるとのことです。
フランスでのリサイタルのリハーサル演奏動画(ソナタ第3番)が公開されています。
2つのショパンリサイタルが近付いてきました。どちらも予定通り開催予定。
・12/12 愛知県知立リリオホール 昼夜公演(完売)
・12/18 サントリーホール 14時 あと少しお席ありますhttps://t.co/elz3Qq1cAn帰国直前のフランスリサイタルのリハを撮っておいたので載せます。ソナタ3番:)#ショパン pic.twitter.com/UUA3e2g31v
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) December 7, 2021
ROHM CLASSIC SPECIAL トーク&コンサート
ロームミュージックチャンネルのストリーミング配信「カーテンコール」を使って行われました。
場所はロームシアター京都ミュージックサロン、ピアノはYAMAHAの小ぶりのサイズでした(C3?)。
務川慧悟の仏蘭西(フランス)日記
日時:2022年1月7日(金)19:00~20:00
配信はこちらから(配信済):https://curtaincall.media/schedule/5149
司会は元テレ朝アナウンサーで、現在はフリーアナウンサーとしてクラシックの企画や司会をメインとして活躍されている朝岡聡さんでした。
務川さんはロームミュージックファンデーション2015、2016年度奨学生です。
演奏曲と進行は以下の要領で進みました。
ドビュッシー:前奏曲集第2集第6曲「風変わりなラヴィーヌ将軍」
サティ:ピカデリー
モーツァルト:ソナタ第8番イ短調K.310第1楽章
ショパン:バラード第4番ヘ短調Op.52
務川さんへのインタビュー1
フランスでの生活、コンクールとリサイタルの違いなど
務川さんのフランス生活については以前書いておられたコラムがまだ残っています。
リンク先をご覧ください。
ファンからの質問コーナー
「最も好きな曲は?」との質問もありました
ラヴェル:夜のガスパール全曲
夜のガスパールについての務川さんの以前のつぶやき
ラヴェルのピアノソロ作品のうち主要なものはほとんど各7~8回以上は本番にかけてきたけれど、唯一いちどしか人前で演奏したことのないものがある:夜のガスパール。それは何も好きでないからというわけではなくて、ほとんど20世紀前半の遺産といってもよいくらい天才的なこの作品を真にあるべき姿で
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) September 6, 2021
大変に困難なことだけれどがんばりますそしてまた日本でも今後しばしば弾いてゆきたいものですのぅ
— 務川 慧悟 Keigo MUKAWA (@keigoop32) September 6, 2021
務川さんへのインタビュー2
今年やりたいこと、目標
アンコール
ドビュッシー:前奏曲集第2集第12曲「花火」
アーカイブ配信は2022年1月21日以降実施されます:https://curtaincall.media/archivevideo?id=3240
まとめ
楽しみにしていた務川さんのサントリーホールデビューは予定通り開催されて良かったです。
とても素敵なショパンを聴くことができた素晴らしいリサイタルでした。
「仏蘭西日記」では、普段着の演奏から夜のガスパールまで多彩なプログラムを楽しみました。
特に、夜のガスパールは圧巻で、美しくどこか切ないオンディーヌ、暗闇の中に射す不気味な光のような絞首台、自在に駆け回るスケールの大きなスカルボ、ホールで空気の震えを感じたいと思いました。
そして、いつ聴いても務川さんの「花火」は良いなぁ。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
コメント
hirofumi様
エリザベート王妃国際コンクール詳細、大変ありがとうございました。
務川さん、坂田さん、どなたの活躍も本当に素晴らしい。音源拝聴しましたが、表現力の豊かさ、技術的な演奏水準の高さに圧倒されました。特に坂田さんのバッハアダージョ美しい…感涙ものですね。これからのご活躍が楽しみな方々です。
今までもhirofumi様のブログのおかげで、何人もの素晴らしいピアニストの方々の存在と名演を知ることができました。感謝しております。コルトー派の自分には勿体ない程素晴らしい教授の指導を受けながら、クラシックピアノ音楽の教養があまりにも乏しく、hirofumi様のブログを読ませていただき、参考になる知識がてんこ盛りで非常に興味深いです。物凄く博識でいらっしゃるので私の頭では追いつかないことも多々ありますが(笑)。
レッスン記事も楽しみにしております。先生につかれずに練習モチベーションを維持されておられるご様子、伝わって参ります。蝸牛の歩み….しかし止まらないで進み続けると微かな光が見えてくるのがピアノ学習の楽しい所かもしれません。私は数ヶ月要した「水の反映」をほぼ終了、「運動」に取り組み中です。これらを立派なホールで演奏されたhirofumi様は凄いと感じ、自分も人前で演奏できるレベルに仕上げることができれば….と願いつつ日々精進中です。
これからもブログ記事を心から楽しみにしております。
> 聖弥さま
ブログをお読みいただき、またコメントいただきありがとうございます。
また、過分なお言葉を頂戴して恐縮しております。
エリザベートはセミファイナルでコンチェルトや新作の課題曲の演奏を求められる上に、リサイタルプログラムも2種類準備しなければならず、しかも前日に演奏するプログラムを指定される、またファイナルでも新作のコンチェルトを演奏前1週間の隔離生活の上に演奏するという過酷なコンクールですね。プログラムも多彩ですし、コンテスタントも音楽的な演奏をする方が上に進んでいくようです。今回も強烈なテクニックを誇る方々が予選で落とされてしまっています。それだけに、なんで?という結果にならないコンクールでもあるように思います。
僕個人の練習については、あれこれ手を出してしまってやや収拾がつかなくなってきていますので、基礎練も含めて整理することが必要ですし、テンポラリーでみてくださる先生を探してレッスンを受けることも考えてみようと思っています。そのためには何か仕上げていかないといけないのですが、どうしたものかと悩んでおります。
引続きよろしくお願いいたします。