プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番 〜超絶技巧にひそむニッポンの面影〜

ピアノ
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2020年3月6日の「ららら♪クラシック」は、ピアニストの反田恭平さんをゲストに迎えて、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ハ長調を採り上げていました。プロコフィエフは反田さんの言を借りれば「映える(ばえる)作曲家」とのことです。

そんな映える作曲家プロコフィエフ、そしてピアノ協奏曲第3番について見ていきましょう。

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プロコフィエフの略歴と主な作品

プロコフィエフは1891年4月23日、現在のウクライナ(当時はロシア帝国)生まれ、13歳でサンクトペテルブルク音楽院で作曲、ピアノを学びました。ロシア革命後にシベリア、日本経由でアメリカに渡り(計5回)、パリでも暮らしています。20年の海外生活を経て1936年、ソビエト連邦に帰国しました。 1953年3月5日没。

主な作品

🔸古典交響曲、交響曲2〜7(青春)番
🔸オペラ「三つのオレンジへの恋」
🔸バレエ音楽「道化師」「ロメオとジュリエット」「シンデレラ」「石の花」
🔸劇付随音楽「ボリス・ゴドゥノフ」「エフゲニー・オネーギン」「キージェ中尉」
🔸管弦楽曲「スキタイ組曲(「アラとロリー」)」「バレエ組曲道化師」「三つのオレンジへの恋組曲」「交響組曲キージェ中尉」「ロメオとジュリエット第1〜3組曲」「シンデレラ第1〜3組曲」「ウラル狂詩曲(バレエ音楽「石の花」による)」「交響的物語ピーターと狼」
🔸ピアノ協奏曲第1〜5番
🔸ヴァイオリン協奏曲第1、2番
🔸チェロ協奏曲第1番、チェロと管弦楽のための交響的協奏曲ホ短調(チェロ協奏曲第2番)
🔸弦楽四重奏曲第1、2番
🔸ヴァイオリンソナタ1、2番
🔸ピアノソナタ第1〜9番(6〜8番「戦争ソナタ」)
🔸トッカータ op.11
🔸バレエ「ロメオとジュリエット」からの10の小品

これらのうち、番組中で簡単に紹介されたのは3曲でした。

バレエ音楽「ロメオとジュリエット」(モンターギュ家とキャピュレット家)

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交響的物語ピーターと狼

チェロと管弦楽のための交響的協奏曲

ピアノ協奏曲第3番ハ長調作品126

1921年、プロコフィエフの独奏とストック指揮/シカゴ交響楽団によって世界初演されています。翌年、パリ公演でクーセヴィツキーが指揮したことからヒット、20世紀の代表的作品となりました。

最近、日本でも「高得点に導く、観客と共感できる、一度はやってみたい曲」(桐朋村上教授)「(大編成のオケを伴うので)音楽が壮大、ソリストも大きく見える」(反田さん)として、ピアノコンクールで盛んに採り上げられています。

日本音楽コンクールでも2012年以降、以下のコンテスタント(敬称略)がこの曲で本選に臨みました。

2012年 務川彗悟(1位、反田恭平と同率)吉武優(入選)
2013年 齊藤一也(2)
2015年 五十嵐薫子(3)
2017年 吉見友貴(1)

務川さんと吉見さんの演奏が映像で流れました。務川さんは大学1年生でしたから高校生のようにすら見えました。務川さんは後に浜松の本選でも弾いていますし、その前回の大会ではこの曲を弾いたガジェヴさんが優勝しています。

浜コンを題材としたと言われる「蜂蜜と雷鳴」では、栄伝亜夜(映画)/マサル(原作小説)がこの曲を本選で採り上げる設定になっていました。

超絶技巧にひそむニッポンの面影

1918年に「古典交響曲」の初演直後、アメリカへの亡命を決意したプロコフィエフは、シベリア、日本経由でアメリカに渡ります。敦賀港から同年6月1日東京に到着しますが、船便がなく8月まで日本での滞在を余儀なくされました。

プロコフィエフ自身の日記によれば、日本滞在日程はこのようになっています。

6/1 東京、横浜
6/12〜18 京都、大阪(6/13)
6/19〜28 奈良
7/19〜20 軽井沢
7/28 箱根
8/2 横浜からサンフランシスコに向け出発

さて、この「ニッポンの面影」ですが、このピアノ協奏曲の第3楽章冒頭、弦楽器のピチカートとファゴットで奏されるメロディが、「越後獅子」の影響を受けているという説があります。日本伝統音階の都節(ミソラシド)で作られた長唄の越後獅子の影響を受けたというものです。

この番組中でも、長唄三味線の高橋智久さんが「プロコの3番は長唄の「何か」に似ているとだけ言われて聴いたら、これは越後獅子だと思った」と仰っています。プロコフィエフが日本に滞在した大正時代は、長唄や琴が一般的に街に流れていた時代で、自分の作品に使ってみようと思ったのではないかと説明されていました。

この考え方は、1953年に音楽評論家野村光一氏が評論集「レコードに聴くピアノ音楽」で発表されたものだそうですが、一方で、それは「俗説」で中央アジアの民謡を祖にした可能性が高いと切り捨てている解説も目にしました。

検証されて国際的にも認められるようになれば「少し誇らしくなる」(反田さん)かも知れませんね。

YouTubeで音源を探る

番組ではガヴリリュクのピアノ、オケはノセダ指揮のN響でしたが、ほかの音源も探してみましょう。

アルゲリッチ

この曲の名盤として僕が挙げるとすれば、やはりアルゲリッチとアバド/BPO(1967)による超名演だと思います。アルゲリッチの鮮やかで奔放かつ叙情豊かな演奏と、アバドのタクトがピアノとオケの両方を見事にコントロールしています。アルゲリッチとアバドの相性は本当に良い、というか彼女とステージで対話が成立する指揮者はアバドしかいないのではないかと思うくらいです。

YouTubeでは音源が見つかりませんでしたので、ディスクへのリンクを貼っておきます。Spotifyで聴くことができます。

代わりと言っては失礼ですが、アルゲリッチのピアノを聴いて頂く意味で、デュトワ/OSMとの演奏をどうぞ。

ベロフ

アルゲリッチの彼氏であったこともあるベロフとマズア/ライプツィヒゲヴァントハウス管(1974)です。ともかくベロフさんのピアノが見事で、強奏の打楽器的なところはバシバシ決まっているし、超高速の指回りも一糸乱れずしかも粒の揃った美しい音だし、エッジを効かせたかと思えば、豊かに歌っていたり、やりたい放題のように聴こえます。心配なマズアの棒もオケはちゃんとコントロールして、ベロフさんに喰らいついている感じが丁々発止な感じを演出しています。かと言ってヒヤヒヤすることはまったくなく安心して聴けます。



フランソワ

こういう演奏を聴くとダメ出しする人もいるのかも知れませんが、このフランソワとロヴィツキ/フィルハーモニア管の演奏は、いつものように冒頭では酔っ払っているのだか、ラリっているのか、またまたぁ〜と思わせる出だしですが、そこには既にエスプリが存在して、知らないうちに惹き込まれて、圧倒される中で終わる、そんな演奏です。ほかの音源では聴こえてこない音もたくさん聴こえます。この空間を羽根をつけて飛んでいるような自由さは、ほかの誰にも真似できないものだと思います。

YouTubeでは発見できなかったのですが、クリュイタンスとの演奏ももちろん素晴らしいです。

ユジャワン

これは検索したら最初に出てきたのと、アバドのタクトということで聴いてみたものです。

アバドのコントロールはさすがなのですが、ピアノは「一通り弾きました」感が今一つ拭きれないように感じました。そういうピアノが彼女の魅力という部分もあり、僕自身も好きなピアニストなのですが、上に挙げた演奏を聴いてしまうとう〜んと唸ってしまいました。

まとめ

プロコフィエフが越後獅子に影響を受けたいうことについて、これまで国際的には賛同されていないということなので、証跡となる見つからないのかも知れませんね。本人に訊くしかないのかも知れませんが、どなたかが検証して証明されれば日本人のピアニストにとって、この曲はもっと共感を持って弾くことができる、身近なものになるのかも知れませんね。

コメント

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