【台湾/映画】牯嶺街(クーリンジェ(チェ))少年殺人事件

台湾
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2020年3月に台湾への旅行が実質的にできなくなってしまいました。

あまり映画に関心のない僕ではありますが、この機会に過去の作品も含めて台湾映画を少しずつ見ていこうと思っています。今回はその中から映画史上に残る傑作、金馬賞を総ナメにしたエドワード・ヤン監督の「牯嶺街少年殺人事件」を今さらですがご紹介します。

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「牯嶺街少年殺人事件」の作品情報

公開情報

台湾初公開 1991年
日本初公開 1992年
4Kレストア・デジタルリマスター版公開 2017年(台湾映画)

監督

楊徳昌(エドワード・ヤン)

キャスト

小四(シャオスー)(建国高級中学夜間部学生):張震(チャン・チェン)
小明(シャオミン):楊靜怡(リサ・ヤン)

「小公園」グループ

王茂(ワンマオ)/小猫王(リトル・プレスリー)(小公園のメンバー、小四のクラスメート):王啓讃(ワン・チーザン)
飛機(フェイジー)(小公園のメンバー、小四のクラスメート):柯宇綸(クー・ユールン)
小馬(シャオマー)(小四のクラスへの転入生):譚志剛(タン・チーガン)
小虎(シャオフー)(小四のクラスメート):周慧國(ジョウ・ホェイクオ)
ハニー(小公園のリーダー):林鴻銘(リン・ホンミン)
滑頭(ホアトウ)(小公園のメンバー):陳宏宇(チャン・ホンユー)
二條(アーティアオ)(小公園のメンバー):王宗正(ワン・リンチェン)
小翠(シャオツイ)(滑頭の恋人、小公園のメンバー):唐暁翠(タン・シャオツイ))

「217」グループ

山東(シャンドン)(217グループのリーダー):楊順清(ヤン・シュンチン)
神経(クレージー)(山東の彼女):倪淑君(ニー・シュウジュン)
卡五(カーウ)(217のメンバー):王維明(ワン・ウェイミン)

小四の家族ほか

小四の父:張國柱(チャン・クオチュー)
小四の母:金燕玲(エレイン・ジン)
張娟(チャンジュエン)(小四の姉、長女):王娟(ワン・ジュエン)
老二(ラオアー)(小四の兄、長男):張翰(チャン・ハン)
張瓊(チャンチョン)(小四の姉、次女):姜秀瓊(チアン・ショウチョン)
張雲(チャンユエン)(小四の妹、三女):頼梵転(ライ・ファンユン)
汪國正(ワン・グオチェン)(政府の有力者):徐明(シュー・ミン)
医師:施明楊(シュー・ミンヤン)

概要

楊監督が事件の舞台となった同じ建国中学の夜間部に通っていたとき、その一年上の先輩の少年による実際のガールフレンド殺人事件が発生しました。その事件に発想を得て制作されたのが、この作品「牯嶺街少年殺人事件」です。

1992年に日本で劇場公開されたあと、ソフト化されたものの、複雑な権利関係のために長きにわたって再公開もソフト再販もなかったところ、2017年にクリアにした上でオリジナルネガより4Kレストア・デジタルリマスター版が制作され、劇場公開されました。

1992年の公開時には3時間8分版でしたが、4Kレストア・デジタルリマスター版は本作品完成時のオリジナルバージョンの3時間56分版です。現在、Amazon Primeで視聴することができます。

公式サイト:http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/

ストーリー展開

建国高級中学の受験に失敗し、夜間部に入学した小四と不良グループ「小公園」のボス、ハニーの彼女小明との恋模様とともに、「小公園」と「217」との対立、成績が悪いわけでもなく昼間部への転入を目指していた小四が巻き込まれていく様子が描かれていきます。

また、エルヴィス・プレスリーに憧れる時代背景もあり、中山堂という音楽ホールでのコンサートを舞台とした抗争も発生、ハニーが姿を消したり、学校でのトラブルから小四が退学します。

同時に小明のそうならざるを得なかった宿命なのかも知れませんが、小四の同級生で転入生の小馬とつき合い始めたことから、心を痛めた小四が殺人を犯すことになります。

これが大きな流れですが、結末は少年による少女の殺人という衝撃的な事件にも拘らず、映画は極めて淡々と進んでいきます。

「牯嶺街少年殺人事件」の時代(歴史的)背景

僕は「非情城市」もそうだと感じているのですが、この映画はストーリーではなくて映像がともかく暗いのです。おそらく、戒厳令下で、終戦(日本の敗戦)後大陸から移り住んだ人たちとそれ以前から台湾に住んでいた人たちとの格差、また各々の塊の中での格差などを反映しているのではないかなと感じました。

その点で、この当時の時代背景について整理しておくと、この映画の言わんとすることを理解する近道になるのかも知れませんね。

🔸 50年間の日本統治時代の終了
🔸 1945年の日本人の帰国以降、中国大陸から移り住んだ台湾出身以外の外省人とそれ以前から台湾に住んでいた、あるいは台湾出身で大陸に住んでいた本省人(日本統治時代を経験した本省人は日本人だった)
🔸 1949年の国共内戦に敗れた国民党政府が台湾に撤退したことにより、大量流入してきた外省人公務員、軍人とその家族の受皿としての眷村(ジュエンツン/けんそん)(眷村では旧日本人の住居が使われたほか、急場凌ぎ的な住宅も多い)
🔸 東西冷戦による台湾の反共防衛ライン化(反共復国、反攻大陸)
🔸 38年にも及ぶ戒厳令と二・二八事件以降の反政府分子に対する白色テロ(国民の相互監視と密告による中国共産党のスパイ摘発、処刑)ー集会、言論、報道や学問の自由の制限と検閲など

小四は外省人で、父は公務員ですが地位は低く、後ろ盾も実は頼りなく、日本家屋に住んではいるものの、無二の親友であったものの事件の引き金でもあった司令官の父を持ち裕福な暮らしをする小馬の自宅とは比べようもないくらいです。

小明も外省人で貧しい家の育ちですし、不良グループの少年たちも出自を問わず各々の家庭の事情を抱えた存在ということから、外省人と本省人との対立に加えて、外省人の中でも親の職業や地位による差別、詰まるところ格差が社会に影を落としているようです。若者の鬱屈と親の世代の自分ではどうしようもないストレスが存在したのでしょう。

加えて、小四のお父さんは警備総部から嫌疑をかけられて呼び出しを受けます。そして、それ以降人が変わってしまいました。

そんな中で唯一の光は王茂で、このボーイソプラノで格好良くもない少年ですが、どんな状況でも狭義心に溢れ、行動力もある爽やかな好青年として描かれています。

まとめ

牯嶺街には、とても美味しい小籠包を食べさせてくれる名店であり、僕が訪台したときには必ず一度は行く「黄龍荘」があります。

このお店は、もともと行天宮の近くにあった「勝香品點心總匯」が、2013年に今の場所に移転したものなので、牯嶺街と直接関係はないのだろうと思いますが、中正紀念堂駅から牯嶺街、あるいは重慶南路から寧波西街といった賑やかな通りではなく、路地を陽が沈んでから歩いてみると、この映画の頃の面影が表面的に残っているような感じを受けることがあります。

もちろん、今の台湾は明るく優しいところですから、灯りもあまり十分ではない暗い通りを歩いて想像の世界でイメージするだけですが。

タイトルの「殺人事件」は先にも述べましたが、淡々とした進行の中で呆気なく起こります。そして、それがどうなのかというメッセージは感じられませんでした。

この映画で、楊監督が描こうとしたのは、この事件そのものに至る物語というよりは、この事件そのものをモチーフとして、監督自身も経験したあの当時の台湾とその中で生きる若者たちの姿だったのではないかと感じています。

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