いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
出雲一中、島根県立川本高、青森県立弘前南高と続けてきた昭和のスクールバンドシリーズ、今回は埼玉県の市立川口高校に関する記事について加筆修正、音源なども加えてまとめました。
2007年4月26日 市立川口高校吹奏楽部
1970年台終わりから80年代にかけて、個性的な演奏で鮮烈な印象を残した市立川口高校吹奏楽部。
その演奏を初めて聴かせて頂いたのは、東京普門館での79年全日本コンクールでした。
前年の課題曲「ジュビラーテ」(ジェイガー)と「ローマの謝肉祭序曲」で関東大会金賞、というオーソドックスな選曲から普門館での演奏はまったく想像がつきませんでした。
全日本初出場を果たした赤いブレザーの彼らは高校の部朝一番。
紹介アナウンスの後、指揮の信国先生の腕がゆっくりと振り降ろされ、掌で奏されるティンパニのソロで始まった浦田健次郎の「プレリュード」(課題曲)。
密かに生まれた小さな命は少しずつ動き始め、やがて独り立ちし、さらに新たな出会いや事件、様々な柵に揉まれながら遂に爆発、そして最後は過去を振り返りつつ静かにその命を終える。
この間約5分、筆者はホールの空気が変わるのを感じました。
「とんでもないチームだ、初出場だなんて信じられない」
続く、自由曲はネリベルの「二つの交響的断章」。
やや硬質な音質ながらよくブレンドされたサウンドで、金管が勝りがちなこの曲が非常に美しいハーモニーに包まれます。
そこへ斬りこむシャープな打楽器群は自由自在に駆け巡り、さながらパーカッション協奏曲の様相を呈していました。
二年前の天理高校と同じ曲だとは到底信じられないくらい溢れる創造性溢れる演奏。
これまたティンパニのソロで雄叫びをあげた二曲目は圧巻、ドライブ感を効かせたスピード感の溢れる鬼気迫る演奏に5000人の聴衆がさらわれていきます。
チャイムが加わったラストのDの音が鳴り終わった瞬間、拍手・大歓声とともに、とてつもない緊張感から解放された安堵の溜息が漏れました。
その後も快進撃は続き、特に81・82年の自由曲は信国先生の作品で、コンクール史上初の指揮者による自作自演。
二つの大きな鐘や身をくねらせて吹く法螺貝等のパフォーマンスも話題になりました。
83年には「ウィーン世界青少年音楽祭」に参加し、ウィーン大賞、オーストリア国営放送賞、高校部門最優秀賞を総嘗めにしました。
吹奏楽のための「花祭り」/マクベス:神の恵みを受けて
東北地方の民謡によるコラージュ/信国康博:吹奏楽のための「無言の変革」より問いアイヌの輪舞/信国康博:吹奏楽のための「無言の変革」よりそこに人の影はなかった
そして、筆者が二度目に聴かせて頂いたのは87年の全日本コンクールでした。
渚スコープ/大栗裕:吹奏楽のための「神話」(天岩屋戸の物語による)
このときも会場全体が云うも云われぬ幽玄な空気に包まれ、彼らの出番だけがまったく異次元の空間で行われたかのような緊張感。
演奏そのものにはパートの力のバラつきやわずかな傷も窺がわれましたが、有無を云わせない存在感で圧倒しました。
あまりの衝撃に即売テープを購入したのですが、残念ながらその体験を再現することは録音では叶いませんでした。
まるでプロパガンダだ!やりすぎだ!
批判あるいはやっかみの声も聞こえましたが、この強烈な個性は何ものにも換え難い貴重なものだと今でも痛烈に思います。
音源など
プレリュード
ネリベル:二つの交響的断章
マクベス:神の恵みを受けて
リード:オセロより前奏曲、オセロとデズデモーナ、廷臣たちの入場
大栗裕:吹奏楽のための「神話」(天岩屋戸の物語による)
なお「無言の変革」はYouTubeに音源がアップロードされています。
まとめ
いずれも40年ほど前の演奏ですが、市立川口高校の際立った個性が存分に発揮された素晴らしい演奏だと思います。
コンクールを始め、学校吹奏楽のあり方が云々されていますが、生徒さんたちが音楽の素晴らしさを味わえる環境を大切に考えていただきたいと願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
コメント