いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
今回は、早稲田中・高等学校の数学の先生を務める(当時)一方で、2005年のピティナ・ピアノコンペティション ソロ部門特級グランプリを受賞された金子一朗さんの著書「挑戦するピアニスト」についてお話していきます。
コンクールのほか、オーケストラとの共演、CDリリースそしてソロリサイタルなど多忙を極めるなかで、編み出した独自メソッドが詰まった一冊となっています。
金子一朗さんについて
1962年東京都生まれ
早稲田大学理工学部数学科卒
早稲田中・高等学校数学科教諭を経て現在早稲田高等学校常任理事
一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)理事、同フェスティバル実行委員
2005年 ピティナピアノコンペティション特級グランプリ、聴衆賞、文部科学大臣賞等受賞
2006年1月 ソロリサイタル開催(新宿区角筈ホール)
2006年2月 イタリアトリノ、ボローニャでソロリサイタル
2006年8月 東京文化会館ソロリサイタル
2008年 「ドビュッシー:12の練習曲」(フォンテック)CDリリース(レコード芸術準特選盤)
2009年7月 「挑戦するピアニスト〜独学の流儀」(春秋社)
YouTube:https://www.youtube.com/user/kanekoic
ピアノを角聖子、神野明、K.H.ケマーリンク、森知英、秋山徹也、田部京子各氏、音楽理論を中村初穂氏に師事。
挑戦するピアニスト〜独学の流儀 まえがきから
私は、学生時代から長らく独学でピアノを勉強してきた。コンクールで成果を上げるための大部分の作業は独学であった。そこには無駄もあったし、そのアプローチの仕方に対し批判を受けることもあった。(中略)その方法は、一般に流布しているメソッドとは必ずしも一致しない。
しかし、私は、慌ただしい現代社会で生活しながら、限られた時間でピアノ演奏を十分に楽しむことができる方法を見出したつもりである。ピアノという楽器は、一般には習得するのにとても困難が伴うものであると思われている。確かにそうであるが、その大部分は誤解と無駄によるものだと考えている。私がここに著したアプローチの方法は、一見すると難解に見えるかも知れないが、高齢になっても確実に新曲を暗譜し、公開の場で演奏できる方法であると確信している。(後略)
挑戦するピアニスト〜独学の流儀 目次
まえがき
第l章 グランプリまでの道のり
音楽に囲まれて
中学までのレッスン
独学し続けた高校大学時代
空白の社会人時代
指を怪我する
コンクールを目指す
ピティナ特級最初の挑戦
新たな気分で
2度目の挑戦
2005年のグランプリ
多くのリサイタル
勉強し直す
広がる世界
コンクールで結果を出すには
第ll章 曲を仕上げる手順
音源は聴かない
楽譜の収集
演奏機会を得る
楽譜を読んで分析する
分析の実践
指使いをピアノなしで決める
さあ、ピアノで練習しよう
仕上げ
いざ、本番
第lll章 曲のスタイルは3種類
メロディーと伴奏型
対位法型
和音型
「メロディーと伴奏」「対位法」「和音」の混合型
変奏曲形式によるまとめ
第lV章 曲のスタイルは3種類
指で覚える
ソプラノ星人
暗譜できない
忘れる、止まる
緊張する
うまいと錯覚する
レパートリーが増えない
好きな作曲家の作品しか弾かない
複数の要素を同時に意識できない
音量とスピードが暴走する
弾けても忘れてしまう
自分勝手な演奏
音色が単調になる
指が速く回らない
跳躍のための10か条
コピーになってしまう
第V章 弾けないときの処方箋
テンポと拍子
弾かない指の脱力
指の関節
勢いより和声
遠くに飛ぶ音
ポジションと指使い
歌ってなぞる
メゾピアノは、フォルテ?ピアノ?
ペダルのこと
曲の性格は調性で
腱鞘炎になったら
第Vl章 練習の常識・非常識
リズム練習はやらない
ハノンやチェルニーなんか嫌い
速く弾くにはゆっくり弾く
微妙に異なる音高と強弱をイメージする
ピアノを弾かないで演奏する
ピアノ曲以外のトレンドをぬすむ
留学なんかできないけれど
楽譜の指示を守ると個性が生まれる
ピアノ技術の習得
理論、音楽史、楽譜について
第Vll章 ピアノから広がる世界
ソロだけでなくアンサンブルも
伴奏、室内楽、コンチェルト
コンクールで仲良くなった友人
コンプレックスは肥やし
良い演奏で良い音楽を
音楽を奏でる素晴らしさ
あとがき
筆者(管理人)による読後感
この著作は2009年7月に初版が刊行されました。
2010年3月に旧ブログで筆者が記した読後感は以下の通りでした(原文ママ)。
現役の数学教師であり、ピティナピアノコンペティション特級で3年連続ファイナル進出の末、2005年に見事グランプリを獲得されたピアニスト金子一朗さんの著書。
別に職業を持ちながらも、コンクール入賞を始めとした演奏活動を行っておられる礎となっているのは、まずは音楽を愛していること、そして効率的でアナリーゼに基づいた練習。アマチュアでピアノを続けている人は、闇雲に練習する時間はないこともあって、本書に書かれたアプローチを多かれ少なかれ実践しているのではないかと推察するのですが、ここまで徹底的にアナリーゼする方はやはりいないでしょう、凄いです。
筆者程度のレヴェルでも、「練習の常識・非常識」の「リズム練習はやらない」「ハノンやチェルニーなんか嫌い」「速く弾くにはゆっくり弾く」は御意、また「音源は聴かない」ことは実際試してみるとなるほどと納得しましたし、「レパートリーが増えない」はとても参考になりました。
和声の知識が必要なところも多く、読み進むには面倒な部分がありますが、興味をもったトピックについて辞書的に読んでも良いのではないかと思います。
この手の書物にはそうそうお目にかかれないでしょう。
挑戦するピアニスト 独学の流儀
金子一朗著 白水社
まとめ
この著作の通りに実践するのはなかなか大変ですが、管理人でさえ、十分とは言えませんがいくつかは実際に取り入れています。
通勤していた当時、ピアノなしで電車の中でフィンガリングを決めていましたし、音源を聴かない、楽譜を収集するなどは今でも実践しています。
譜例も多くわかりやすいですし、何か困ったときに項目を眺めて事典のように使うこともできるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
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