今回の記事は過去ブログへの投稿を加筆修正したものです。
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この「春と修羅」は、2019年10月4日に公開中された恩田陸さんの同名小説を原作とした映画「蜜蜂と遠雷」で、その舞台となったピアノコンクールの共通の課題曲として、菱沼忠明という作曲家に委嘱された作品として登場します。
宮沢賢治の同名の詩集にインスパイアされて書かれたという設定になっています。
らららクラシック/松岡茉優さん・河村尚子さん・藤倉大さん出演
2019年10月初旬にEテレで放映された「らららクラシック」には、この映画に主演された女優の松岡茉優さん、松岡さんが演じた主人公栄伝亜夜(えいでんあや)の演奏を担当したピアニストの河村尚子さん、そして「春と修羅」を具体的な作品として形にした作曲家の藤倉大さんが出演なさっていました。
藤倉さんによれば、その具体化にあたって、小説の中にあちこちに書かれた「春と修羅」の描写部分をスマホで撮影し、それらをプリントアウトして作業部屋に貼った結果、「連続殺人犯の部屋のようになってしまった」そうです。
この曲で80小節を過ぎた辺りで登場するカデンツァも、登場人物(4人)の個性に合わせて書き分けたとのこと。
あわせて「映画」中で演奏されることを勘案して、この現代音楽がただ難しいだけという印象を与えないよう留意もされています。
映画の石川監督は「この映画では音楽が本物であるべき」との考えから、脚本の前に演奏を担当するピアニストや課題曲の作曲家を先に決めたということからも、この作品の具現化への熱意が窺われます。
藤倉さんの「春と修羅」について、河村さんは以下の通り話されました。
すごくシンプルなメロディーから始まる清らかな水みたいな感じの音楽
初めて楽譜を見たときに「これなら大丈夫かも」と思ったけど(現代音楽はあまり得意ではないそうです)10小節くらいあとに地獄が待っていた
色彩がものすごく繊細で、フランス音楽 ラヴェルとかメシアンを弾いている気分
すごく宙に浮いた感じ、自然がささやかに動いている、動物が動いている、細胞を顕微鏡で見ている感じ、そういうイメージが湧いた
また、藤倉さんは、栄伝亜夜の弾くカデンツァについて「最初の和音さえ決められればあとはうまく行く」だろうと思い書いたのだそうです。
原作のラフマニノフの音について触れた部分も意識したとのこと。
そこには結局、亜夜の亡き母の存在、大きな愛情、母なる大地、自然、その中で生きる安堵感があったのですよね。
番組の最後、河村さんが「春と修羅」を全曲演奏しました。
聴き始めはストラヴィンスキーの春の祭典の冒頭部分が浮かびました。
河村さんの仰る通り、顕微鏡の中で蠢く細胞のような感じもありました。
聴き終えて、河村さんご自身がカデンツァを作ったとしたらどんな感じになるのか、聴いてみたいとも思いました。
音源など
風間塵
演奏:藤田真央さん
高島明石
演奏:福間洸太朗さん
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
演奏:金子三勇士さん
栄伝亜夜
演奏:河村尚子さん

一部の演奏はSpotifyで聴けます。
まとめ
原作小説「蜂蜜と遠雷」は、コンクールシーンの表現に限っても臨場感溢れるものでしたし、塵の言う「閉じ込められた音楽を広いところに連れ出す」はこの原作の根幹をなす考え方だろうと感じました。

映画では各々の配役がドンピシャで自然に浸ることができましたし、ピアノとオケの吹き替えも豪華布陣による素晴らしい演奏でエキサイティングでした。
課題曲の「春と修羅」は演奏と演技によって、4人各々の抱えるものを的確に描き出しており感動を覚えました。
映画はAmazon primeで見ることができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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