1986年度全日本吹奏楽コンクール大学の部は、北海道1 東北1 関東2 東京2 北陸1 東海1 関西2 九州2 の計12団体が出場しました。四国からの出場がなく、関東の枠が前年度対比+1の2となっています。
この年の課題曲も1976年度から続く全部門共通の4曲が基本とした路線が踏襲されています。
初出場は、福井大学、龍谷大学、青山学院大学の3団体でした。
第34回(昭和61年度、1986年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1985年10月19日
開催場所 尼崎市総合文化センター
課題曲は4曲(BとCが連盟委嘱作品)で全部門共通でした。
課A : 吹奏楽のための「変容」 (瑞木薫)
課B : 嗚呼! (兼田敏)
課C : 吹奏楽のための序曲 (間宮芳生)
課D : コンサート・マーチ「テイク・オフ」 (建部知弘)
課題曲Dは建部さんの原曲を藤田玄播さんが補作したものです。
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 九州代表 福岡大学 指揮 : 大倉安幸 | 🥉銅賞 |
課B : 嗚呼! | |
バレエ音楽「三角帽子」 より 終幕の踊り :ファリャ/ウィギンズ | |
02 関東代表 文教大学 指揮 : 平川真 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のための「変容」 | |
歌劇「サルタン皇帝の物語」 より 3つの奇蹟 :リムスキー=コルサコフ/藤田玄播 | |
03 関西代表 近畿大学 指揮 : 辻井清幸 | 🥇金賞 |
課C : 吹奏楽のための序曲 | |
ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲 :C.T.スミス | |
04 北陸代表 福井大学 指揮 : 松木光仁 | 🥉銅賞 |
課D : コンサート・マーチ「テイク・オフ」 | |
エル・カミーノ・レアル :A.リード | |
05 東京代表 中央大学 指揮 : 林紀人 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「変容」 | |
バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 より 朝の踊り、喧嘩、少女ジュリエット、タイボルトの死 :プロコフィエフ/林紀人 | |
06 関東代表 神奈川大学 指揮 : 小澤俊朗 | 🥇金賞 |
課C : 吹奏楽のための序曲 | |
交響詩「ローマの祭り」 より チルチェンセス、主顕祭 :レスピーギ/W.シェイファー | |
07 北海道代表 北海道教育大学函館分校 指揮 : 寺中哲二 | 🥈銀賞 |
課B : 嗚呼! | |
法華経からの三つの啓示 より 平和の悦び :A.リード | |
08 関西代表 龍谷大学 指揮 : 佐渡裕 | 🥈銀賞 |
課D : コンサート・マーチ「テイク・オフ」 | |
組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 :コダーイ/上埜孝 | |
09 東海代表 三重大学 指揮 : 沖公智 | 🥈銀賞 |
課B : 嗚呼! | |
交響曲第3番イ短調 より 第3楽章 :ラフマニノフ/沖公智 | |
10 東北代表 岩手大学 指揮 : 高崎一 | 🥈銀賞 |
課C : 吹奏楽のための序曲 | |
交響曲第1番ニ短調 より 第4楽章 :ラフマニノフ/穴山和義 | |
11 九州代表 福岡工業大学 指揮 : 鈴木孝佳 | 🥈銀賞 |
課C : 吹奏楽のための序曲 | |
ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲 :C.T.スミス | |
12 東京代表 青山学院大学 指揮 : 齋藤行 | 🥉銅賞 |
課C : 吹奏楽のための序曲 | |
交響的舞曲 :ラフマニノフ/佐藤正人 |
結果は金賞3、銀賞6、銅賞3となりましたが、銀賞の中でも採点上は2つに差があって割れていたようです。課題曲は「序曲」が最多の5、「嗚呼」が3、「変容」と「テイクオフ」が2団体ずつでした。
この大会では、若き日の世界的指揮者佐渡裕さんが龍谷大を指揮されています。このあたりの経緯については「僕はいかにして指揮者になったのか(新潮文庫)」に詳しいので、機会があればご一読くださいね。
神奈川大が3年連続6回目、中央大が2年連続3回目の金賞に輝き、惜しくも前年度銀賞だった近畿大も金賞に返り咲きました。神奈川大の自由曲は「ローマの祭り」です。小澤先生がこの「祭り」を指揮されたことについては、個人的には非常に新鮮に感じました。
音源を探る
近畿大学
中央大学
バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 より
神奈川大学
交響詩「ローマの祭り」より
龍谷大学
三重大学
交響曲第3番イ短調 より 第3楽章
福岡工業大学
龍谷大の「コンサートマーチ テイク・オフ」の音源は手許にあったはずなのですが、どうやらお貸ししたままになっているようで、ここに貼ることができず残念です。佐渡さんらしい演奏だったと記憶しています。
まとめ
指揮者が前年から辻井先生に戻った近畿大は、課題曲では繊細かつ緻密なアンサンブルの妙で、どこか懐かしさを感じさせるような素敵な演奏のあと、輝かしくダイナミックなスミスを聴かせました。このチームらしい素晴らしい演奏でした。
神奈川大の課題曲も見事なアンサンブルでした。そして、レスピーギは良い意味で予想を裏切るエッジの効いた推進力溢れる演奏でした。この曲のラストは湧くことが多いですが、この演奏は自然にブラボーと叫んでしまいそうになりますね。
中央大の課題曲の作り方はさすがでした。素敵なクラリネットセクション大活躍。ロメジュリは怖い「大公の宣告」じゃなくて、この演奏のように深い慈しみを感じさせる「前奏曲」から始めてくれるとホッとします。場面変化も見事で語彙の豊富な素敵な演奏でした。
そして、龍谷大の自由曲はエネルギーの凝縮と発散が見事で、起伏に富んだ表現力豊かな演奏でした。今や名門の龍谷大の輝かしい歴史のスタートを飾るにふさわしいものだったと思います。
Viva! 吹奏楽!
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