1984年度全日本吹奏楽コンクール高校の部は、前年度同様北海道2 東北3 関東4 東京2 北陸2 東海3 関西3 中国3 四国2 九州3 の計27団体が出場しました。
この年の課題曲も1976年度から続く全部門共通の4曲が基本とした路線が踏襲されています。
初出場は、土佐女子高校、愛媛県立伊予高校、青森山田高校、金山学園(現、岡山学芸館)高校、静岡県立浜松商業高校、兵庫県立神戸高校、柏市立柏高校の7校でした。
第32回(昭和59年度、1984年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1984年10月27日
開催場所 東京普門館
課題曲は4曲(AとDが連盟委嘱作品)で全部門共通でした。
課A : 変容―断章 (池上敏)
課B : 吹奏楽のための土俗的舞曲 (和田薫)
課C : シンフォニエッタ (三上次郎)
課D : マーチ・オーパス・ワン (浦田健次郎)
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 関西代表 天理高等学校 指揮 : 新子菊雄 | 🥇金賞 |
課A : 変容―断章 | |
フェスティヴァル・ヴァリエーション :C.T.スミス | |
02 北陸代表 富山県立高岡商業高等学校 指揮 : 土合勝彦 | 🥈銀賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
バレエ音楽「ロメオとジュリエット」 よりモンタギュー家とキャピュレット家、タイボルトの死 :プロコフィエフ/上埜孝 | |
03 九州代表 福岡県立嘉穂高等学校 指揮 : 竹森正貢 | 🥉銅賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
歌劇「イーゴリ公」 より ダッタン人の踊り :ボロディン/ハインズレー | |
04 北海道代表 北海道札幌白石高等学校 指揮 : 米谷久男 | 🥉銅賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
序曲「春の猟犬」 :A.リード | |
05 四国代表 土佐女子高等学校 指揮 : 池昌夫 | 🥉銅賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
ディオニソスの祭 :F.シュミット | |
06 北海道代表 東海大学付属第四高等学校 指揮 : 井田重芳 | 🥈銀賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
天使ミカエルの嘆き :藤田玄播 | |
07 四国代表 愛媛県立伊予高等学校 指揮 : 阿部正幸 | 🥉銅賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
交響組曲「シェエラザード」 より 第4楽章 バグダッドの祭、海、船の難破 :リムスキー=コルサコフ/ハインズレー | |
08 関東代表 習志野市立習志野高等学校 指揮 : 新妻寛 | 🥈銀賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
吹奏楽のための交響的詩曲「地底」 :名取吾朗 | |
09 東北代表 秋田県立花輪高等学校 指揮 : 小林久仁郎 | 🥇金賞 |
課A : 変容―断章 | |
交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」 :ハチャトゥリアン/小林久仁郎 | |
10 九州代表 中村学園女子高等学校 指揮 : 松澤洋 | 🥇金賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
バレエ組曲「ロデオ」 より 土曜の夜のワルツ、ホーダウン :コープランド/小長谷宗一 | |
11 中国代表 島根県立出雲高等学校 指揮 : 金本克康 | 🥉銅賞 |
課A : 変容―断章 | |
幻想交響曲 より サバトの夜の夢 :ベルリオーズ/藤田玄播 | |
12 関東代表 神奈川県立野庭高等学校 指揮 : 中澤忠雄 | 🥇金賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
「ハムレット」への音楽 より プロローグ、俳優たちの入場、エルシノア城とクローディアス王の宮中 :A.リード | |
13 東海代表 東邦高等学校 指揮 : 稲垣信哉 | 🥉銅賞 |
課B : 吹奏楽のための土俗的舞曲 | |
吹奏楽のための交響曲 より 第4楽章 :ジェイガー | |
14 関東代表 川口市立川口高等学校 指揮 : 信国康博 | 🥇金賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
吹奏楽のための詩曲「永訣の詩」 :名取吾朗 | |
15 東北代表 青森山田高等学校 指揮 : 山内一泰 | 🥈銀賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
ディオニソスの祭 :F.シュミット | |
16 東海代表 愛知工業大学名電高等学校 指揮 : 松井郁雄 | 🥇金賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
祈りとトッカータ :バーンズ | |
17 東北代表 秋田県立秋田南高等学校 指揮 : 高橋紘一 | 🥈銀賞 |
課B : 吹奏楽のための土俗的舞曲 | |
変容抒情短詩 :三善晃/天野正道 | |
18 中国代表 金山学園高等学校 指揮 : 佐藤堯史 | 🥉銅賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
ローマの謝肉祭序曲 :ベルリオーズ/サフラネク | |
19 東京代表 駒澤大学高等学校 指揮 : 吉野信行 | 🥈銀賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
吹奏楽のための祝典音楽 :廣瀬量平/上埜孝 | |
20 九州代表 福岡工業大学附属高等学校 指揮 : 鈴木孝佳 | 🥇金賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
シャマリータ :ニクソン | |
21 東海代表 静岡県立浜松商業高等学校 指揮 : 遠山詠一 | 🥉銅賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
吹奏楽のためのカタストロフィ :保科洋 | |
22 北陸代表 富山県立富山商業高等学校 指揮 : 坪島照信 | 🥈銀賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
組曲「ハーリ・ヤーノシュ」 より II. IV. VI. :コダーイ/上埜孝 | |
23 関西代表 兵庫県立神戸高等学校 指揮 : 兵頭伸二 | 🥈銀賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
楽劇「サロメ」 より七つのヴェールの踊り :R.シュトラウス/ハインズレー | |
24 関東代表 柏市立柏高等学校 指揮 : 石田修一 | 🥇金賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
アルメニアン・ダンス・パートII より ロリの歌 :A.リード | |
25 関西代表 大阪府立淀川工業高等学校 指揮 : 丸谷明夫 | 🥈銀賞 |
課C : シンフォニエッタ | |
交響組曲「寄港地」 より チュニス~ネフタ、バレンシア :イベール/デュポン | |
26 東京代表 関東第一高等学校 指揮 : 塩谷晋平 | 🥈銀賞 |
課D : マーチ・オーパス・ワン | |
管楽器と打楽器のための交響曲第2番 :チャンス | |
27 中国代表 島根県立川本高等学校 指揮 : 片寄祐二 | 🥇金賞 |
課B : 吹奏楽のための土俗的舞曲 | |
交響組曲「寄港地」 より チュニス~ネフタ、バレンシア :イベール/デュポン |
結果は金賞9団体、銀賞10団体、そして銅賞が8団体でした。課題曲の選択状況は「マーチオーパスワン」と「シンフォニエッタ」が各々11、10と拮抗しており、この2曲で8割近くを占めました。超難曲の「変容ー断章」と中学の部で最多の「土俗的舞曲」が3団体ずつでした。
前年度以前からの連続金賞は2団体のみで、福岡工大附属が4年連続、野庭高が2年連続の受賞となりました。天理高は前年度は関西代表を逃しましたが、この年は朝一ながら11回目の金賞に輝きました。また、前年度銅賞だった花輪高は圧倒的な印象を残す演奏で8回目の金賞を受賞しました(得点合計で第1位)。
初出場の市立柏高が金賞を受賞したほかは、ベテラン校が名を連ねています。中村学園女子高、市立川口高が81年以来4度目、愛工大名電高が2年ぶり4度目、川本高が81年以来の出場で2度目の金賞を受賞しました。
音源を探る
天理高等学校
フェスティバル・バリエーションズ
福岡県立嘉穂高等学校
習志野市立習志野高等学校
交響的詩曲「地底」
秋田県立花輪高等学校
交響曲第3番「シンフォニー・ポエム」
中村学園女子高等学校
シンフォニエッタ
バレエ組曲「ロデオ」より
神奈川県立野庭高等学校
マーチ・オーパス・ワン
組曲「ハムレットへの音楽」より
川口市立川口高等学校
愛知工業大学名電高等学校
祈りとトッカータ
秋田県立秋田南高等学校
変容抒情短詩
福岡工業大学附属高等学校
チャマリータ
兵庫県立神戸高等学校
シンフォニエッタ(関西大会)
楽劇「サロメ」より七つのヴェールの踊り(関西大会)
柏市立柏高等学校
大阪府立淀川工業高等学校
交響組曲「寄港地」より(32:05〜)
天理高は目の覚めるような鮮やかな演奏。課題曲、自由曲ともにタンギングの鬼のような曲なのにも拘らず、メカニックな噛み合わせにならずに大きな音楽の流れを感じます。ロビーで「ウチもフェスバリやろうかと思ったんですけど、あの曲安っぽいから」と、この大会に出場された団体の先生がおっしゃっていたそうですが、天理が演奏すると安っぽくなってないと思いますよ。
そして、この大会といえば花輪高に始まり、花輪高に終わります。中学の部の土気中がそうであったように。82年はウォルトンの交響曲を好演しながら東北代表とならず、83年はベルクを採り上げたながらも銅賞に止まって溜まっていたエネルギーが、ここで爆発したというところでしょうか。シンフォニーポエムはオリジナルとは別の曲になってしまっていますが、このアレンジが音楽として成立していることをこの演奏が示していると思います。素晴らしかったと思います。
そして、忘れてはならないのが市立川口高の課題曲。この団体が演奏するとこういう仕上がりになるんですね。打楽器や特殊楽器に頼るのではない「二つの交響的断章」や「神の恵みを受けて」を演奏していた頃の独特のスタイル、雰囲気が、この演奏では感じられます。やはり市立川口は市立川口だったとその存在感の大きさを思い知らされました。
まとめ
どこも地区大会が激戦となり、新しい顔がベテラン団体に代わって全日本に出場するだけではなく、全日本でも前年度の銅賞団体が金賞に輝き、連続して金賞を受賞してきた団体が銀賞に止まったりと、全日本でも動きが出てきました。聴き手からすれば、先入観ではなく、演奏そのものを楽しむことができるようになってきたということでしょうか。
次の大会が今まで以上に楽しみにさせてくれた32回大会でした。
Viva! 吹奏楽!
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