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1983年度全日本吹奏楽コンクール高校の部は、関東と四国の代表枠が1つずつ増えて、北海道2 東北3 関東4 東京2 北陸2 東海3 関西3 中国3 四国2 九州3 の計27団体が出場しました。
この年の課題曲も1976年度から続く全部門共通の4曲が基本とした路線が踏襲されています。
初出場は、日本大学豊山高校、神奈川県立野庭高校、茨城高校、兵庫県立明石北高校、関東第一高校の5校でした。
第31回(昭和58年度、1983年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1983年11月6日
開催場所 東京普門館
課題曲は4曲で全部門共通。
B〜Dはいずれも連盟委嘱作品、Aのみが公募入選作品でした。
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 (内藤淳一)
課B : 白鳳狂詩曲 (藤掛廣幸)
課C : カドリーユ (後藤洋)
課D : キューピッドのマーチ(川崎優)
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 東京代表 日本大学豊山高等学校 指揮 : 大橋秀丸 | 🥉銅賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
吹奏楽のためのカタストロフィ :保科洋 | |
02 中国代表 島根県立出雲高等学校 指揮 : 金本克康 | 🥈銀賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
バレエ音楽「四季」 より 秋 :グラズノフ/バンクロフト | |
03 九州代表 福岡県立嘉穂高等学校 指揮 : 竹森正貢 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲 :ニコライ/ゴドフリー | |
04 中国代表 就実高等学校 指揮 : 村松勲 | 🥉銅賞 |
課C : カドリーユ | |
組曲「イベリア」 より エル・プエルト、トゥリアーナ :アルベニス/吉市幹雄 | |
05 関東代表 神奈川県立野庭高等学校 指揮 : 中澤忠雄 | 🥇金賞 |
課C : カドリーユ | |
アルメニアン・ダンス・パートI :A.リード | |
06 北陸代表 富山県立富山商業高等学校 指揮 : 坪島照信 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
交響詩「海」 より 風と海との対話 :ドビュッシー/上埜孝 | |
07 四国代表 香川県立観音寺第一高等学校 指揮 : 村山英一 | 🥉銅賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
交響詩「海」 より 風と海との対話 :ドビュッシー/渡部修明 | |
08 中国代表 広島市立基町高等学校 指揮 : 土居晃 | 🥉銅賞 |
課C : カドリーユ | |
バレエ組曲「シルヴィア」 より 前奏曲、狩の女神 :ドリーブ | |
09 北海道代表 東海大学付属第四高等学校 指揮 : 井田重芳 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
古祀 :保科洋 | |
10 四国代表 高松第一高等学校 指揮 : 石川孝司 | 🥉銅賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
歌劇「さまよえるオランダ人」序曲 :ワーグナー/ゴドフリー | |
11 関東代表 茨城高等学校 指揮 : 和田寛 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
歌劇「ローエングリン」 より エルザの大聖堂への行列 :ワーグナー/カイエ | |
12 関西代表 大阪府立淀川工業高等学校 指揮 : 丸谷明夫 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
吹奏楽のための神話(天岩屋戸の物語による) :大栗裕 | |
13 北海道代表 北海道札幌白石高等学校 指揮 : 米谷久男 | 🥈銀賞 |
課C : カドリーユ | |
「ハムレット」への音楽 より エルシノア城、俳優たちの入場、クローディアス王の宮中 :A.リード | |
14 関東代表 習志野市立習志野高等学校 指揮 : 新妻寛 | 🥇金賞 |
課C : カドリーユ | |
交響曲 より第4楽章 :矢代秋雄/天野正道 | |
15 北陸代表 富山県立高岡商業高等学校 指揮 : 土合勝彦 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
交響詩「ローマの祭り」 より チルチェンセス、主顕祭 :レスピーギ/W.シェイファー | |
16 東海代表 愛知工業大学名電高等学校 指揮 : 松井郁雄 | 🥈銀賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
プラハのための音楽1968 より トッカータとコラール :フサ | |
17 九州代表 中村学園女子高等学校 指揮 : 松澤洋 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
イタリア奇想曲 :チャイコフスキー/ウィンターボトム | |
18 関東代表 逗子開成高等学校 指揮 : 西野明男 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
バレエ組曲「ロデオ」 より カウボーイの休日 :コープランド/西野明男 | |
19 関西代表 兵庫県立明石北高等学校 指揮 : 松井隆司 | 🥇金賞 |
課C : カドリーユ | |
歌劇「イーゴリ公」 より ダッタン人の踊り :ボロディン/ハインズレー | |
20 東海代表 東邦高等学校 指揮 : 稲垣信哉 | 🥉銅賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
「ハムレット」への音楽 :A.リード | |
21 東北代表 秋田県立花輪高等学校 指揮 : 小林久仁郎 | 🥉銅賞 |
課C : カドリーユ | |
3つの管弦楽曲 より III. 行進曲 :ベルク/小林久仁郎 | |
22 東京代表 関東第一高等学校 指揮 : 塩谷晋平 | 🥉銅賞 |
課A : 吹奏楽のためのインヴェンション第1番 | |
オセロ より 前奏曲、オセロとデズデモーナ、廷臣たちの入場 :A.リード | |
23 東北代表 秋田県立仁賀保高等学校 指揮 : 高野豊昭 | 🥈銀賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
交響三章 より 第3楽章 :三善晃/高野豊昭 | |
24 関西代表 兵庫県立兵庫高等学校 指揮 : 吉永陽一 | 🥈銀賞 |
課C : カドリーユ | |
狂詩曲「タラス・ブーリバ」 より III.予言とタラス・ブーリバの死 :ヤナーチェク/浅井政尾 | |
25 東海代表 東海大学第一高等学校 指揮 : 榊原達 | 🥈銀賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
シンフォニア・フェスティーヴァ より ファンファーレ、アリア、トッカータ (ラニング | |
26 九州代表 福岡工業大学附属高等学校 指揮 : 鈴木孝佳 | 🥇金賞 |
課B : 白鳳狂詩曲 | |
祈りとトッカータ :バーンズ | |
27 東北代表 秋田県立秋田南高等学校 指揮 : 高橋紘一 | 🥈銀賞 |
課C : カドリーユ | |
バレエ組曲「火の鳥」より :ストラヴィンスキー/天野正道 |
この大会での課題曲の選択状況は「インベンション」が12団体、白鳳狂詩曲が6団体、そしてカドリーユが9団体で、キューピットのマーチを選んだ団体はありませんでした。佳曲揃いの中、課題曲Dは自由曲とのペアリングが難しそうな印象がありました。結果は金賞が8団体、銀賞が11団体、銅賞が8団体で、決めごととはいえ容赦なく銅賞を配分していますね。
金賞団体では、淀川工が4年連続で5金に王手をかけたほか、富山商と福岡工大附が3年連続、東海第四が2年連続の金賞に輝きました。習志野高は2年ぶりに金賞に返り咲き、前年度地区大会で涙を呑んだ高岡商が同じ自由曲で臨み金賞を受賞しました。また「ブラバンキッズ・ラプソディ」の野庭高は初出場で金賞、激戦の兵庫県、関西をトップ通過した同じく初出場の明石北高も見事に金賞を受賞しました。
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福岡県立嘉穂高校
就実高校
カドリーユ
組曲「イベリア」より
神奈川県立野庭高校
カドリーユ
アルメニアンダンス・パートI
富山県立富山商業高校
広島市立基町高校
東海大学付属第四高校
大阪府立淀川工業高校
吹奏楽のためのインヴェンション第1番
吹奏楽のための神話
習志野市立習志野高校
カドリーユ
交響曲から第4楽章
富山県立高岡商業高校
中村学園女子高校
イタリア奇想曲
兵庫県立明石北高校
カドリーユ
歌劇「イーゴリ公」よりダッタン人の踊り
秋田県立花輪高校
管弦楽のための三つの小品からマーチ
秋田県立仁賀保高校
交響三章より第3楽章
兵庫県立兵庫高校
東海大学第一高校
福岡工業大学附属高校
祈りとトッカータ
秋田県立秋田南高校
初出場の野庭高校はこの年からその全日本での歴史を刻むことになりますが、きちんとトレーニングされ、作り込まれた音楽の中に、メンバーの前向きな姿勢が窺われ、積極的で自然な演奏が素敵でした。同じく初出場の明石北高は、シルクのようなサウンドを強力な武器として、深みと厚さのある響きの中で、流麗でしっとりとした情感を湛えた素晴らしい演奏を披露しました。
淀川工は積極的な音楽作りで堂々たる演奏。個人的には「これこそ淀工」と申し上げたくなるような演奏で、神話もこのチームには合っていると思うのですが、最近のローテーションには入っていないのが残念です。もう一度コンクールで聴きたいと思っているのは僕だけでしょうか。
福岡工大附属の明るく輝かしい音はいつ聴いても素晴らしいですが、この大会ではその響きの中で神秘的なものも感じさせる正統派の本格的な音楽を披露しています。また、富山商の自由曲の選択はやや意外だったものの、立体的かつすっきりとした合奏で、ドビュッシーの演奏として十分なものだったと思います。
そして、忘れてはならないのが習志野高の演奏です。このチームでしか聴けない温かく輝くサウンドで情感豊かに歌い上げられたカドリーユ、一方でくっきりと立体的に堅牢な体躯で雄弁な演奏を展開した矢代の交響曲ともに圧巻でした。
まとめ
この大会では、それぞれのチームの個性に合った、聴き手の立場からも楽しいと思うプログラムがずらりと並んでいて、大変聴き応えがありました。そして、銀賞や銅賞という結果は厳しいのではないかと感じられた演奏もあったように思います。
また、この年度は天理高が関西大会で代表の選から漏れ、レヴェルの向上にともなって各地区での代表争いも熾烈になってきました。この頃から日本はバブルに向かってまっしぐらだったのですが、吹奏楽の世界は足許をしっかりと固めて歩んでいきます。
Viva! 吹奏楽!
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