音源情報を更新しました。
1982年度全日本吹奏楽コンクール大学の部は、北海道1 東北1 関東1 東京2 北陸1 東海1 関西2 四国1 九州2 の計12団体が出場しました。初出場は福岡工業大学のみでした。
この年の課題曲も1976年度から続く全部門共通の4曲が基本とした路線が踏襲されています。
また、前年度まで5年連続金賞を受賞した駒澤大学が特別演奏を行いました。
第30回(昭和57年度、1982年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1982年10月24日
開催場所 尼崎市総合文化センター
課題曲は4曲で全部門共通。
課A : 吹奏楽のためのカプリチオ (吉田公彦)
課B : 序奏とアレグロ (木下牧子)
課C : アイヌの輪舞 (早川博二)
課D : サンライズ・マーチ (岩河三郎)
課題曲A〜Cはいずれも公募入選作品、Dのみが連盟委嘱作品でした。Aの吉田さんは当時早稲田大学のオーケストラ団員、木下さんは合唱を始め多くの作品を生んでいる押しも押されぬ作曲家ですが、当時は芸大作曲科卒業直後、早川さんは歌謡曲などを手がける作曲家でした。課題曲の内容については、当時盛んに議論がありました(B以外は駄作など)。
審査方法が、従来の各審査員によるA・B・Cの3段階評価から、以下の方法に変更されました。
・課題曲と自由曲の2曲を、技術と表現の各々2項目について、A・B・C・D・E の5段階で評価
・A〜Eを点数に換算(A=5 B=4 C=3 D=2 E=1)、合計点の高い団体から金・銀・銅の3つのグループで表彰
・金・銀・銅の3つのグループ判定は採点委員が行い、審査委員長が決定。その結果を審査員に報告し了解を得る
以降、上下カットなどの追加はありましたが、基本的にはこの方法が2012年まで継続することになります。
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 北海道代表 北海道教育大学函館分校 指揮 : 寺中哲二 | 🥉銅賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
祈りとトッカータ :バーンズ | |
02 東京代表 中央大学 指揮 : 林紀人 | 🥈銀賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
交響詩「海」 より 風と海との対話 :ドビュッシー/上岡洋一 | |
03 九州代表 琉球大学 指揮 : 村松志門 | 🥉銅賞 |
課A : 吹奏楽のためのカプリチオ | |
海の歌 :R.ミッチェル | |
04 九州代表 福岡工業大学 指揮 : 鈴木孝佳 | 🥉銅賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
ソワレ・ミュージカル より I.行進曲 III.チロル風舞曲 IV.ボレロ V.タランテラ :ブリテン/T.C.ブラウン | |
05 関東代表 神奈川大学 指揮 : 小澤俊朗 | 🥇金賞 |
課B : 序奏とアレグロ | |
ディオニソスの祭 :F.シュミット | |
06 東京代表 亜細亜大学 指揮 : 小長谷宗一 | 🥇金賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
交響曲第2番 より 第3・4楽章 :ボロディン/小長谷宗一 | |
07 東北代表 岩手大学 指揮 : 小笠原勇美 | 🥈銀賞 |
課B : 序奏とアレグロ | |
バレエ音楽「三角帽子」 より 粉屋の踊り、終幕の踊り :ファリャ/及川晃貴 | |
08 関東代表 千葉商科大学 指揮 : 坂逸郎 | 🥉銅賞 |
課B : 序奏とアレグロ | |
交響詩「魔法使いの弟子」 :デュカス/ハインズレー | |
09 四国代表 香川大学吹奏楽団 指揮 : 安部忠明 | 🥉銅賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
バレエ音楽「四季」 より 秋 :グラズノフ/バンクロフト | |
10 関西代表 近畿大学 指揮 : 森下治郎 | 🥇金賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
アンティフォナーレ :ネリベル | |
11 東海代表 三重大学 指揮 : 沖公智 | 🥇金賞 |
課B : 序奏とアレグロ | |
楽劇「サロメ」 より七つのヴェールの踊り :R.シュトラウス/ハインズレー | |
12 関西代表 関西学院大学 指揮 : 梅田尚哉 | 🥇金賞 |
課D : サンライズ・マーチ | |
交響曲第5番 より第4楽章 :ショスタコーヴィチ/ライター | |
特別演奏 | |
駒澤大学 | |
祝典序曲:廣瀬量平/上埜孝、ボレロ:ラヴェル/岩井直溥 |
上の表の結果欄には最終の結果を記載しました。
審査方法がこの大会から変更されたことは上に書いた通りですが、この大会は例年と異なり、全部門の中で大学の部が最初に開催され、同じ日の午後に職場の部、一般の部、そして一週間後に高校の部、中学の部が行われたため、新たな審査方法の適用第一号が大学の部になりました。
職場の部が終わったところで、先行して発表された大学の部は次の通りでした。
銀賞:神奈川大、亜細亜大、近畿大、三重大、関西学院大
銅賞:北海道教育大函館分校、中央大、琉球大、福岡工業大、岩手大、千葉商科大、香川大
表彰については3つのグループで表彰、つまり相対評価ということだったのですが、秋山先生からは「満点の85%以上を金賞の絶対評価とする」という説明があったそうで、その点で大学の部はその基準に満たなかったので金賞が出なかったということでした。
最後の一般の部まで終了して行われた表彰式では、欠席する大学が出るなど異例の展開となりました。コンクール終了後、参加した大学の部のほとんどの団体連名で質問状が出されました。それを受けて連盟は緊急理事会を開いた結果、判定基準の適用に誤りがあったとして、上の表の通りの結果に修正されました。「修正後金」とタイトルに記載したのは、そういう経緯によるものです。
当時はネットもなく、朝日新聞と関連雑誌だけが情報源でした。そのうち、コンクールについても大々的に特集を組んでいたバンドジャーナルやバンドピープルでは詳しい説明を読んだ記憶はなく、管楽器情報誌のパイパースがこの事情について特集を組んでいました。その中でだったと思いますが、大学の部と一般の部の両方で指揮をなさった小長谷宗一さんが、「どちらの団体がレベルが上なのかは指揮をしていた自分がよくわかっている」というようなことも仰っていました。
この尼崎市総合文化センター(アルカイックホール)での演奏は、僕もすべて聴きました。そのときの様子は、以下の別ブログ(基本的には日記です)に記載していますので、よろしければご覧ください。
YouTubeで音源を探る
神奈川大学
亜細亜大学
サンライズ・マーチ
交響曲第2番より第3、4楽章
岩手大学
近畿大学
サンライズ・マーチ
アンティフォナーレ
三重大学
関西学院大学
駒澤大学
ボレロ
3年ぶりに出場した神奈川大は、序奏とアレグロ、ディオニソスの祭ともに緊張感に溢れ、かつ色彩感豊かなサウンドが光っています。この2曲のカップリングも絶妙で、12分間が一つのステージとして完成している感すらあります。
近畿大は、前年のカバレフスキーから一転、このチームの真骨頂とも言える選曲。そのアンティフォナーレでは、その実力を遺憾なく発揮して、この曲の面白さ、良さを十分に引出した聴き応えのある素晴らしい演奏を披露しました。
2回目の5金特演の駒澤大は、そのままコンクールに出ていたら…という仮定論を語りたくなるほど完成度が高く、なおかつお洒落で聴き手の心の中にそっと忍び込んで虜にさせてしまうような演奏でした(実際、会場ではこの一番沸きました)。
まとめ
当日は「修正後金」の発表はもちろんありませんでしたので、「この大学の部のレベルで金賞なしなのか」と思いつつ、帰路についたことを今でも覚えています。そして、中学の部が終了した一週間後の修正発表にも驚きました。審査方法の変更について、事前の十分なテスティングがないまま、準備不十分で本番を迎えてしまった感も強く、秋山先生の説明が混乱に拍車をかけてしまったようにも思われます。
なんとなくバダバタ感のあった大学の部ですが、翌年も色々ありました。
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