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1980年度コンクール高校の部では、北陸、中国、西部支部の代表枠が各々1ずつ増えて、北海道 (2) 東北 (3) 関東 (3) 東京 (2) 北陸 (2) 東海 (3) 関西 (3) 中国 (3) 四国 (1) 西部 (3) の計25団体が出場しました。
この年の課題曲はすべて連盟委嘱作品で、1976年度から続く全部門共通の4曲が基本とした路線が踏襲されています。
初出場は、明治大学付属明治高校、北海道中標津高校、東海大学第一高校の3校のみでした。
また、秋田県立秋田南高校と玉川学園高等部が5年連続金賞を受賞しました。
第28回(昭和55年度、1980年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1980年11月3日
開催場所 東京杉並普門館
課題曲は4曲全部門共通で各々選択。
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 (小山清茂)
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 (服部公一)
課C : 北海の大漁歌 (岩河三郎)
課D : 行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」 (齋藤高順)
A~Cの3曲はわが国の素材を題材とした曲で、BとCはその名の通り各々沖縄、北海道の旋法、民謡などが使われています。
Aの「花祭り」は一般的にはお釈迦さまの誕生日(4/8)をお祝いする行事を指しますが、この課題曲については、愛知県奥三河の東栄町などの花祭(「花祭」は700年以上続く伝統的な神事で、1976年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。花祭の起源ははっきりとは分かりませんが平安時代に最盛期を迎えた吉野・熊野の修験道が奥三河に暮らす人々に影響をもたらしたと言われています。 東栄町では、毎年11月から3月の冬の寒い時期に町内各地区で花祭は行われます。なぜ、こんな寒い時期に行うのかというと…花祭は霜月祭とも言われ、もとは旧暦の霜月に行われていました。これは、新暦の12月から1月頃にあたり、一年で最も寒い時期です。 冬の間に衰えた太陽と大地の生命力を、花祭を行うことで呼び醒まします(東栄町HPより引用))を題材としているようです。
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 中国代表 就実高等学校 指揮 : 村松勲 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
歌劇「ル・シッド」のバレエ音楽 より マドリードの踊り、ナバーラの踊り :マスネ/吉市幹雄 | |
02 西部代表 沖縄県立首里高等学校 指揮 : 名渡山愛文 | 🥈銀賞 |
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 | |
幻想交響曲 より サバトの夜の夢 :ベルリオーズ/山元正造 | |
03 関東代表 群馬県立前橋商業高等学校 指揮 : 大木隆明 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
管弦楽のための鄙歌第2番 :小山清茂/大木隆明 | |
04 中国代表 島根県立出雲高等学校 指揮 : 金本克康 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
交響詩「海」 より 風と海との対話 :ドビュッシー/錦織雄司 | |
05 東京代表 明治大学付属明治高等学校 指揮 : 山本孝 | 🥈銀賞 |
課C : 北海の大漁歌 | |
歌劇「キャンディード」序曲 :バーンスタイン/ビーラー | |
06 北陸代表 富山県立富山商業高等学校 指揮 : 坪島照信 | 🥈銀賞 |
課D : 行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」 | |
舞踏組曲 :バルトーク/上埜孝 | |
07 東京代表 玉川学園高等部 指揮 : 高浪晋一 | 🥇金賞 |
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 | |
アルメニアン・ダンス・パートII より ロリの歌 :A.リード | |
08 関東代表 川口市立川口高等学校 指揮 : 信国康博 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
神の恵みを受けて :マクベス | |
09 関西代表 兵庫県立兵庫高等学校 指揮 : 吉永陽一 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
交響詩「ローマの祭り」 より 主顕祭 :レスピーギ/吉永陽一 | |
10 四国代表 高松第一高等学校 指揮 : 石川孝司 | 🥈銀賞 |
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 | |
交響詩「禿山の一夜」 :ムソルグスキー/石川孝司 | |
11 東北代表 青森県立弘前南高等学校 指揮 : 斎藤聖一 | 🥇金賞 |
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 | |
組曲「ドリー」 :フォーレ | |
12 西部代表 中村学園女子高等学校 指揮 : 松澤洋 | 🥈銀賞 |
課B : 吹奏楽のための序曲「南の島から」 | |
歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲 :ニコライ/松澤洋 | |
13 東北代表 秋田県立秋田南高等学校 指揮 : 高橋紘一 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
交響三章 より 第3楽章 :三善晃/天野正道 | |
14 西部代表 福岡工業大学附属高等学校 指揮 : 鈴木孝佳 | 🥈銀賞 |
課D : 行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」 | |
喜遊曲「踊る行列」 :増田宏三 | |
15 関西代表 大阪府立淀川工業高等学校 指揮 : 丸谷明夫 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
大阪俗謡による幻想曲 :大栗裕 | |
16 関西代表 天理高等学校 指揮 : 新子菊雄 | 🥇金賞 |
課D : 行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」 | |
ストーンヘンジ交響曲 より 夜明け、いけにえ :ホエアー | |
17 関東代表 千葉県立銚子商業高等学校 指揮 : 小澤俊朗 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
ディオニソスの祭 :F.シュミット | |
18 東北代表 秋田県立花輪高等学校 指揮 : 小林久仁郎 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
交響曲第2番「鐘」より 第1楽章 :ハチャトゥリアン/小林久仁郎 | |
19 北海道代表 東海大学付属第四高等学校 指揮 : 井田重芳 | 🥇金賞 |
課C : 北海の大漁歌 | |
歌劇「リエンツィ」序曲 :ワーグナー | |
20 東海代表 静岡県立浜松工業高等学校 指揮 : 遠山詠一 | 🥈銀賞 |
課C : 北海の大漁歌 | |
天使ミカエルの嘆き :藤田玄播 | |
21 中国代表 広島市立基町高等学校 指揮 : 増広卓三 | 🥈銀賞 |
課D : 行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」 | |
リシルド序曲 :パレ | |
22 北陸代表 富山県立高岡商業高等学校 指揮 : 土合勝彦 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
パシフィック・セレブレーション組曲 より 祈り、パレード :ニクソン | |
23 北海道代表 北海道中標津高等学校 指揮 : 山形正法 | 🥇金賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
楽劇「サロメ」より七つのヴェールの踊り :R.シュトラウス | |
24 東海代表 名古屋電気高等学校 指揮 : 松井郁雄 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
仮面舞踏会 :パーシケッティ | |
25 東海代表 東海大学第一高等学校 指揮 : 榊原達 | 🥈銀賞 |
課A : 吹奏楽のための「花祭り」 | |
二つの交響的断章 :ネリベル |
この大会は何と25団体中14団体が金賞を受賞しました。
前述の通り、秋田南高と玉川学園が5年連続金賞を受賞したほか、天理高と弘前南高が4年連続、前橋商が3年連続、就実高、銚子商と市立川口高が2年連続の金賞。淀川工と花輪高が75年以来久しぶりの金賞に返り咲きました。兵庫高と高岡商は3度目、東海第四高は2度目の出場で初めての金賞、中標津高が初出場で金賞を射止めました。
後日朝日新聞に掲載された総評でも、演奏の内容については十分に書ききれず、学校名がずらりと並んでいたような印象があるほどでした。ベテランチームがその実力を発揮した結果になりました。
課題曲は過半数の13校が「花祭り」を選択、B〜Dは「南の島から」が5、「北海の大漁歌」が3、「オーバー・ザ・ギャラクシー」が4とほぼ均等に割れています。金賞団体も玉川学園と弘前南高がB、東海第四高がC、天理高がDで、ほかの団体はすべてAを演奏しました。
音源を探る
就実高
バレエ音楽「ル・シッド」より
前橋商
玉川学園
アルメニアンダンスパートllより
市立川口高
神の恵みを受けて
兵庫高
交響詩「ローマの祭り」から主顕祭
弘前南高
吹奏楽のための序曲「南の島から」
組曲「ドリー」より
中村学園女子高
吹奏楽のための序曲「南の島から」
歌劇「ウインザーの陽気な女房たち」序曲
秋田南高
交響三章より第3楽章
福岡工業大学附属高
嬉遊曲「踊る行列」
淀川工
吹奏楽のための花祭り
大阪俗謡による幻想曲
天理高
行進曲「オーバー・ザ・ギャラクシー」
銚子商
吹奏楽のための花祭り
ディオニソスの祭り
花輪高
交響曲第2番「鐘」より第1楽章
東海第四高
浜松工
天使ミカエルの嘆き
市立基町高
名古屋電気高
仮面舞踏会
高岡商
中標津高
(北海道大会)
この大会の名演は数あれど、個人的にイチオシなのは何といっても銚子商です。スマートで洗練された中に日本の情景を描き出した課題曲、自由曲は3年前に採り上げた際にも驚きましたが、それに相当の磨きがかかったディオニソスは圧倒的でした。銚子商ならではの明るく色彩感溢れるサウンドがふわりと軽くホールを舞いました。
5年連続金賞を受賞した秋田南高は三善晃の交響三章に挑み、鉄壁のアンサンブルで複雑な織込みが綾を成すこの曲を音楽的に演奏、5金のもう一校、玉川学園はリードのアルメニアンダンスを目にも止まらない鮮やかさでキレキレの演奏を聴かせてくれました。これまでの4年間もよく聴けば実はそうだったのかも知れませんが、このチームのイメージをがらりと変えた演奏だったように思います。
高岡商の自由曲はこのチームのもつ本格的な音、サウンドを隅々まで活かし切った鮮やかで見事な演奏で、おそらく作品の価値を超える演奏だったのではないかと思います。淀川工の大阪俗謡は今や3年に一度聴くことができますが、この大会が初お目見えでした。兵庫高のローマの祭りは細かいところにまで行き届いた演奏で、後半に向かった盛り上がりは会場を沸かせました。また、就実高の優秀なソリストは朝一から会場の耳を釘付けにしました。
まとめ
この年は、高校の部史上初めて金賞の数が過半数を占め、かつ銅賞が一つも出なかった大会となりました。銅賞ゼロは中学の部も同様ですが、金賞の数は中学を大きく上回りました。
簡単なコメントでは書き切れないくらいの好演が続き、審査員の方々もその意味でご苦労があっただろうと推察されます。この結果がおそらく2年後の審査方法の改定に繋がったのではないかと思われます。
Viva! 吹奏楽!
コメント
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