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1974年度コンクール中学の部では、北海道、東北、関東、関西の各地区の代表枠が各2となり、全日本コンクール主催地区枠1を加えて15団体が出場しました。結果として関西代表は兵庫県代表3校ということになり、現在まで続く層の厚さを示すことになりました。
また、この年の課題曲は前年度までの「中学校の部」と「それ以外」の区分がなくなり、全部門共通の2曲の中から各々の団体が選択する方法に変わりました。ここから数年間は課題曲の対象、選定について試行錯誤が続くことになります。
なお、中学校の部の初出場は、那覇市立石田中学校、西宮市立上甲子園中学校、三木市立三木中学校の3団体でした。
第22回(昭和49年度、1974年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1974年11月4日、5日
開催場所 神戸文化ホール
課題曲
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア:小林徹
課B : 高度な技術への指標:河辺公一
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
01 東北代表 八戸市立湊中学校 指揮 : 新井山雅行 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」:R.シュトラウス/新井山雅行 | |
02 関東代表 糸魚川市立糸魚川中学校 指揮 : 福田伊治 | 🥈 |
課B : 高度な技術への指標 | |
狂詩曲「ジェリコ」:グールド | |
03 北陸代表 春江町立春江中学校 指揮 : 坪田健夫 | 🥈 |
課B : 高度な技術への指標 | |
トッカータ:フレスコバルディ | |
04 中国代表 出雲市立第一中学校 指揮 : 渡部修明 | 🥇 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
ローマの謝肉祭序曲:ベルリオーズ | |
05 四国代表 松山市立拓南中学校 指揮 : 吉田雅彦 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
交響詩「呪われた狩人」:フランク | |
06 西部代表 那覇市立石田中学校 指揮 : 大城政明 | 🥇 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
交響曲第4番より第4楽章:チャイコフスキー | |
07 東京代表 豊島区立第十中学校 指揮 : 酒井正幸 | 🥇 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
幻想交響曲 より V. サバトの夜の夢:ベルリオーズ | |
08 関西代表 西宮市立今津中学校 指揮 : 得津武史 | 🥇 |
課B : 高度な技術への指標 | |
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565:J.S.バッハ/木村吉宏 | |
09 関東代表 富士吉田市立明見中学校 指揮 : 平野廣海 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
朝鮮民謡の主題による変奏曲:チャンス | |
10 東海代表 蒲郡市立蒲郡中学校 指揮 : 小川和人 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
交響曲第6番「悲愴」より第4楽章:チャイコフスキー | |
11 東北代表 秋田市立山王中学校 指揮 : 木内博 | 🥇 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
スペイン奇想曲より第3、4、5楽章:リムスキー=コルサコフ/木内博 | |
12 北海道代表 旭川市立常盤中学校 指揮 : 戸浪扶 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565:J.S.バッハ | |
13 関西代表 西宮市立上甲子園中学校 指揮 : 南広高 | 🥈 |
課B : 高度な技術への指標 | |
バレエ組曲「シルヴィア」より バッカスの行進と行列:ドリーブ | |
14 関西代表 三木市立三木中学校 指揮 : 長谷川知 | 🥈 |
課B : 高度な技術への指標 | |
組曲「惑星」より 木星:ホルスト | |
15 北海道代表 滝川市立江陵中学校 指揮 : 松浦真 | 🥈 |
課A : 吹奏楽のためのシンフォニア | |
楽劇「神々の黄昏」より ジークフリートの葬送行進曲:ワーグナー |
出場全15団体中、金賞が5団体、銀賞が10団体となり、銅賞はありませんでした。
課題曲の選曲では、Aが10団体、Bが5団体で、関西代表の3団体はいずれもBを演奏しています。関西代表は、高校でも3団体中2団体、職場の部と一般の部でもBを選択していました。
1974年は1970年から採用されたグループ表彰で5金(5年連続全国大会出場かつ5年連続金賞受賞の場合、翌年の全国大会はコンクールには欠場して、全国大会で招待演奏を行っていました)達成の年にあたり、中学校の部では今津中、豊島十中が見事金賞を受賞して5金となりました。
出雲一中は1973年に続いて見事なアンサンブルを聴かせ、また初出場の石田中は息を呑むような鮮やかな演奏で金賞を受賞。また、前年に「ドン・ファン」を演奏しながらも東北大会で涙をのんだ山王中が、帰り咲きの上金賞に輝きました。
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糸魚川中学校
出雲第一中学校
吹奏楽のためのシンフォニア
ローマの謝肉祭序曲
石田中学校
交響曲第4番へ短調第4楽章
豊島第十中学校
吹奏楽のためのシンフォニア
幻想交響曲よりサバトの夜の夢
今津中学校
高度な技術への指標
トッカータとフーガニ短調
山王中学校
スペイン奇想曲より第3・4・5楽章
三木中学校
高度な技術への指標
組曲「惑星」より木星
江陵中学校
出雲一中の模範的なアンサンブル、石田中の初出場とは思えない貫禄の演奏は見事でした。豊島十中の素晴らしいサウンドと音楽の流れは、これまでの集大成ともいえるものでした。今津中の課題曲は各々の部分のスパイスが効いた演奏で、全部門通しても随一の演奏でした。また、山王中は活き活きとした演奏で、的確なアンサンブルと相まって、粒揃いのこの年の金賞団体の中でも際立ったものがありました。
また、惜しくも銀賞となった明見中と蒲郡中の自由曲は素晴らしい演奏だったと思います。音源はありませんが、明見中はキレがあってシャープでスマートな演奏でした。
蒲郡中は聴くのも演奏するのも辛くなるようなこの曲を、中学生とは思えない濃密な音楽性で聴かせてくれています。音楽の前に技術云々が先にどうこう言われていたあの時代に、交響曲の一つの楽章だけを演奏することの意味が講評の中で記載されていたのは、画期的だったのではないでしょうか。
まとめ
グループ表彰に移行して5年目のこの大会は、一つの頂点のようなステージになったのではないかなと個人的には感じました。どの団体も凌ぎを削る演奏で、メカニックやアンサンブル、サウンドにおいても一つの完成形を見たようです。特に、山王中はスペイン(あるいはそれをテーマとした)音楽の世界を切り拓き、編成の上でもトランペットとホルンを3人にするなど工夫が見られました。また、出雲一中もキメの細かいアンサンブルが、次の時代への階段を確実に登っているようでした。
翌年は上に書いた通り、今津中と豊島十中が5年連続金賞で特演にまわってコンクールには不参加となります。新たな顔ぶれやその演奏が楽しみな大会となりました。
Viva! 吹奏楽!
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