音源情報を更新しました。
1973年度第21回大会は名古屋市民会館で開催されました。この大会の中学の部、高校の部では、主催開催支部の代表団体が2つとなり、東海地区の代表が2団体出場しています。
課題曲は中学校の部は兼田敏さんの「吹奏楽のための寓話」、高等学校以上の部は名取吾郎さんの「吹奏楽のためのアラベスク」でした。当時は中学の部の課題曲の方が難しいのではないかと言われるくらいでしたが、この「アラベスク」では余裕がある分、各団体のイマジネーションが活かされた演奏となっていたのかも知れません。
第21回(昭和48年度、1973年)全日本吹奏楽コンクール
開催日時 1973年11月3日
開催場所 名古屋市民会館
課題曲
中学校の部 吹奏楽のための寓話(兼田敏)
高等学校以上の部 吹奏楽のためのアラベスク(名取吾郎)
出場団体(自由曲、指揮者)と審査結果一覧
大学の部
01 関西代表 関西学院大学 指揮 : 酒井均 | 🥇 |
ディオニソスの祭 :F.シュミット | |
02 関東代表 神奈川大学 指揮 : 田原清彦 | 🥈 |
仮面舞踏会 :パーシケッティ | |
03 西部代表 福岡大学 指揮 : 大倉安幸 | 🥈 |
アンティフォナーレ :ネリベル | |
04 東海代表 三重大学 指揮 : 沖公智 | 🥉 |
歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲 :グリンカ | |
05 東北代表 東北学院大学 指揮 : 石橋不二夫 | 🥈 |
シンフォニックバンドのための序曲 :兼田敏 | |
06 東京代表 駒澤大学 指揮 : 上埜孝 | 🥇 |
交響詩「ローマの祭り」より :レスピーギ/上埜孝 |
職場の部
01 西部代表 ブリヂストンタイヤ久留米工場吹奏楽団 指揮 : 小山卯三郎 | 🥇 |
交響曲第5番より第4楽章 :ショスタコーヴィチ | |
02 東北代表 新日本製鉄釜石製鉄所吹奏楽団 指揮 : 西村昌次 | 🥉 |
バレエ組曲「火の鳥」 :ストラヴィンスキー | |
03 東京代表 ヤマハ吹奏楽団東京 指揮 : 高倉正巳 | 🥉 |
コラールとトッカータ :ジェイガー | |
04 中国代表 三井造船玉野造船所吹奏楽部 指揮 : 植田能生 | 🥉 |
ファンファーレ、コラールとフーガ :ジョヴァンニーニ /ロビンソン | |
05 関東代表 日本電気玉川吹奏楽団 指揮 : 小沢一郎 | 🥉 |
ベレロフォン序曲 :ホエアー | |
06 関西代表 阪急百貨店吹奏楽団 指揮 : 鈴木竹男 | 🥇 |
喜歌劇「こうもり」序曲 :J.シュトラウスII世 | |
07 東海代表 新日鐵名古屋吹奏楽団 指揮 : 平田惣一 | 🥈 |
シンフォニックバンドのためのパッサカリア :兼田敏 | |
08 北海道代表 新日鐵室蘭吹奏楽団 指揮 : 小田才助 | 🥉 |
交響詩「宇宙の審判」 :デ=ナルディス |
一般の部
01 東京代表 瑞穂青少年吹奏楽団 指揮 : 牟田久寿 | 🥈 |
吹奏楽のための交響曲より第4楽章 :ジェイガー | |
02 東海代表 蒲郡市吹奏楽団 指揮 : 中井勝 | 🥇 |
歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」序曲 :ベルリオーズ | |
03 中国代表 舟入高校OB吹奏楽団 指揮 : 井尻勝 | 🥈 |
リパーカッション :ピアソン | |
04 北海道代表 旭川市青少年吹奏楽団 指揮 : 戸浪扶 | 🥈 |
スラヴ行進曲 :チャイコフスキー | |
05 北陸代表 金井学園楽友会 指揮 : 畑中好哉 | 🥈 |
ページェントリー序曲 :エドモントソン | |
06 東北代表 盛岡吹奏楽団 指揮 : 安倍丈之 | 🥉 |
グランド・マーチ「スピリット・オブ・ページェントリー」 :フレッチャー | |
07 関西代表 尼崎市吹奏楽団 指揮 : 辻井清幸 | 🥇 |
スラヴ行進曲 :チャイコフスキー | |
08 関東代表 富士吉田吹奏楽団 指揮 : 堀内岳 | 🥉 |
シシリアーノとフィナーレ :ヴィヴァルディ |
大学の部は6団体が出場。関学と駒澤2強時代の到来で、この2チームが金賞、2年ぶりの出場となった三重大学が銅賞となり、そのほかの3団体が銀賞という結果となりました。
職場の部では、前年度不出場だった阪急百貨店とブリヂストンが金賞。ヤマハ浜松は不出場でした。新日鐵から釜石、室蘭、名古屋の3つが出場しているのは特筆すべきでしょう。この中で名古屋製鉄所のみが銀賞を受賞、この部門唯一の銀賞となりました。ストラヴィンスキーの「火の鳥」やナルディスの「宇宙の審判」といった興味深い選曲もありましたが、全体には出場8団体中5団体が銅賞というやや寂しい結果でした。
一般の部も8団体が出場。東京代表として瑞穂青少年吹奏楽団が初出場、この年以降一つの時代を築くことになります。舟入高校OBや旭川青少年といった思わず懐かしいと言ってしまう団体も出場しています。金賞は、前年度同様蒲郡市吹奏楽団と尼崎市吹奏楽団で両団体ともに5金特演に王手をかけました。
YouTubeで音源を探る
関西学院大学
ディオニソスの祭
駒澤大学
吹奏楽のためのアラベスク
交響詩「ローマの祭」より
阪急百貨店
吹奏楽のためのアラベスク
喜歌劇「こうもり」序曲
瑞穂青少年吹奏楽団
蒲郡市吹奏楽団
歌劇「ベンベヌート・チェリーニ」序曲
尼崎市吹奏楽団
スラブ行進曲
音源が少ないのは残念ですが、ここに掲載した演奏はいずれも素晴らしい出来栄えでした。
関西学院大学は丁寧な課題曲に対して、ぶっちぎった感もあるくらいのディオニソスを聴かせています。もう少し響きに余裕があるとなお素晴らしいとは思いますが、タンギングの嵐に思わず興奮してしまいました。また、駒澤大学は課題曲から奔放な演奏を繰り広げ、大学の部トリのこの演奏は駒澤/上埜ワールド全開でした。
職場の部は、個人的趣味ですが「1に阪急、2に阪急、3も4も5も阪急」ということになるでしょうか。落ち着いて不気味なムードを漂わせた課題曲は打楽器のバランスなど独特の演奏、そして、自由曲はやや荒さもありますが、この演奏ほど颯爽とした「こうもり」序曲の演奏は聴いたことがありません。レコードの針が擦り切れるくらいこの演奏を聴いたことを覚えています。
一般の部では、卓抜した合奏力を持ち安定した演奏を聴かせた蒲郡市吹奏楽団とダイナミックでスケールの大きな尼崎市吹奏楽団の2団体が金賞を受賞しました。
初出場、プログラム1番の瑞穂青少年は若さ溢れる溌剌さが気持ち良く、ワクワクするような演奏でした(チャンネルを提供いただきましたので再掲することができました、ありがとうございます)。
まとめ
石油ショックの年の吹奏楽コンクールは、金賞のチームが固まってきた感がある一方、若さのある瑞穂青少年が初めて出場、反面職場の部がやや元気がなくなってきたように思います。翌1974年は神戸文化ホールでの開催で、大学の部の人数の上限が55名となります。
Viva! 吹奏楽!
コメント
[…] 音楽徒然草【吹奏楽/音源掲載】1973/第21回全日本吹奏楽コンクール 大学/職… […]