【ピアノ】ドビュッシー/3つの交響的素描「海」ピアニスト3人6手2台ピアノ版 

ピアノ
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ドビュッシーの代表的管弦楽作品「海」のピアノ編曲版としては、ドビュッシー自身による1台ピアノ4手連弾版、アンドレ・カプレによる2台ピアノ版がよく知られており、録音も多く残されています。

このピアノ編曲版には2台ピアノ版と同じカプレのアレンジによる6手2台ピアノ版が存在しており、我が国ドビュッシー研究・演奏の第一人者の青柳いづみこさん、アルカンの演奏、そしてピアニート公爵としても知られる森下唯さん、そして指揮者でピアノ演奏にも定評のある田部井剛さんによって、2019年に本邦初演されました。そして、同じメンバーによる録音が行われ、2020年にCDが発売されました。

今回はこのCDについてお話していきます。

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ドビュッシー/3つの交響的素描「海」

3つの交響的素描「海」は、ドビュッシーが1903年から1905年にかけて作曲した管弦楽曲で、その名の通り3つの楽章(第1楽章「海上の夜明けから真昼まで」、第2楽章「波の戯れ」、第3楽章「風と海との対話」)により構成されています。

1905年にフランスで出版された「海」初版スコアの表紙デザインには、ドビュッシー自身の希望によって、葛飾北斎「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」が使用されています。

このことなどから「海」は「北斎の浮世絵にインスピレーションを得て作曲された作品」として紹介されることもありますが、その関連性を明確に裏付ける史料の存在は確認されておらず、憶測の域を出ないというのが本当のところのようです。

作品は、この楽譜の出版社のデュラン社の経営者ジャック・デュランに献呈されました。

楽器編成は次の通り基本3管編成(クラリネットのみ2管)で、演奏時間は23〜24分程度です。

フルート2、ピッコロ1、オーボエ2、コールアングレ1、クラリネット2(A管/B♭管持ち替え)、ファゴット3、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット(F管)3、コルネット(C管)2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、大太鼓、トライアングル、シンバル、タムタム、グロッケンシュピールまたはチェレスタ、ハープ 2、弦楽5部

1905年10月、パリでシュヴァイヤール指揮ラムルー管弦楽団によって初演されましたが、評価は芳しくなく、1908年1月にコロンヌ指揮コロンヌ管弦楽団によって再演されることになったものの、指揮者が曲をまとめきれず、結局ドビュッシー自身の指揮によって実施されました。

この再演が大成功に終わったことで「海」はドビュッシーの代表作として歩み始めることになります。

ドビュッシー/3つの交響的素描「海」ピアノ版

1905年に管弦楽版初稿の完成直後、ドビュッシーは1台4手連弾用のピアノ編曲に着手、出版に至りました。一方、アンドレ・カプレは2台4手用への編曲に取りかかり、ドビュッシーの編曲とカプレの編曲は相互に影響し合いつつ、改訂が行われれています。2台4手版は1909年に管弦楽版の改訂稿を取り入れ、出版されています。

また、ガルバンによるピアノソロ用のアレンジが存在します。

もちろん難しいアレンジなのですが、その割には演奏効果が得られない、オケの良さも消えているように思われますし、一方でピアニスティックなものも感じられない、やや残念なというよりも無茶な編曲なのかも知れません。

今回録音された6手2台ピアノ版は、原曲のドビュッシーによる再演の数ヶ月後にカプレによって編曲、演奏されました。

カプレのアレンジのうち、4手2台ピアノ版は出版されていますが、6手版は出版されておらず、フランス国立図書館のデュラン社のアーカイブに残されているそうです。その入手の経緯なども今回のCDのブックレットの中で、青柳さんがお話されています。

演奏者紹介

青柳いづみこ

青柳さんは東京杉並の阿佐ヶ谷のお生まれ、育ちです。

お祖父さまは仏文学者青柳瑞穂さんです。
東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京芸術大学音楽学部卒業。
フランスに留学し、国立マルセイユ音楽院首席卒業。
東京芸術大学大学院博士課程修了。
安川加壽子とピエール・バルビゼに師事。

大阪音楽大学教授、ドビュッシー研究家。

1989年 論文「ドビュッシーと世紀末の美学」により東京芸術大学より学術博士を授与(フランス音楽の分野で初めての博士号)
1990年 文化庁芸術祭賞受賞
1999年「翼のはえた指」で吉田秀和賞受賞
2001年「青柳瑞穂の生涯」で日本エッセイストクラブ賞受賞
2009年「六本指のゴルトベルグ」で講談社エッセイ賞受賞

2005年に刊行された「ピアニストが見たピアニスト 名演奏家の秘密とは」(白水社)が9刷ののち2010年に中公文庫、2007年刊行の「ピアニストは指先で考える
」(中央公論新社) は6刷ののち2011年に中公文庫重版、2008年刊行の「ボクたちクラシック つながり」(文春新書)は現在までに5刷。
刊行された著書は30冊、最新刊は「阿佐ヶ谷アタリデ大ザケノンダ」(平凡社)。

1980年 フランスより帰国、東京で初めてのリサイタル開催
1989〜2000年 「ドビュッシー・シリーズ」開催

これまでに9枚のCDが「レコード芸術」誌で特選盤。
リリースされたCDは18枚、DVDブック、CDブック各1冊、監修CD2枚。

森下唯

森下さんは1981年、東京のお生まれです。

1994年 筑波大学附属駒場中入学
2002年 筑波大学附属駒場高校卒業
2004年 東京芸術大学卒業(音楽学部器楽科ピアノ専攻)
2006年 同大学大学院修了

2004年 第2回東京音楽コンクール第2位
2006年 東京芸術大学大学院修了時、演奏優秀者によるベーゼンドルファー・ジョイントリサイタル(浜離宮朝日ホール)に選出

作曲家アルカンの紹介には特に力を入れており、アルカン生誕200年となる2013年から継続的にオール・アルカン・リサイタルを行っておられます。
2015年よりアルカン作品を集めたCD「アルカン ピアノ・コレクション」シリーズをリリース。

調布国際音楽祭アソシエイト・プロデューサー、東京藝術大学非常勤講師(指揮科演奏研究員)
ピアノを竹尾聆子、辛島輝治、東誠三の各氏に、リート伴奏をコンラート・リヒター氏に師事。

オフィシャルサイト:http://www.morishitayui.jp/

田部井剛

早稲田大学商学部卒業
東京音楽大学指揮科研究生修了、東京芸術大学指揮科卒業

指揮法を遠藤雅古、神宮章、武藤英明、佐藤功太郎、ジェームズ・ロックハート、広上淳一、三石精一の各氏に、ピアノを岩津章子、秦はるひ、藤田雅の諸氏に師事。

ピアニストとしては、ウィーンフィル主席チェロ奏者フリッツ・ドレシャル、上村昇、勝部太、寺谷千枝子、平松英子諸氏と共演されました。
2009年にはコントラバス奏者、白土文雄氏のレコーディングにチェンバロ奏者として参加、2012年にはドビュッシー生誕150周年として浜離宮朝日ホールにて行われた、文学キャバレ「黒猫」とその仲間たち、また、カワイコンサートサロン「パウゼ」にて行われたドビュッシーフェスティバル2012に出演、青柳いづみこさんと連弾しています。

CDについて

収録曲は3曲です。

ドビュッシー/カプレ編:3つの交響的素描「海」
ファリャ/サマズイユ編:交響的印象「スペインの庭の夜」
グレインジャー:緑の茂み

ピアノ:青柳いづみこ、森下唯、田部井剛
2020年2月18〜20日 五反田文化センター音楽ホール
OTTAVAレコード

(アマゾンより転載)
世界的にきわめて珍しい録音
ドビュッシーの「海」に関して、4手2台ピアノの演奏は広く知られていますが、6手 (3人) 2台による演奏はきわめて珍しく、録音されたものは今のところほかに見当たりません。

個性あふれる3人の演奏家たち
わが国のドビュッシー研究と演奏の第一人者である青柳いづみこ、アルカンの紹介に取り組むなど、独自の活動を展開する気鋭のピアニスト森下唯、指揮者として活躍するとともに、ピアニストとしても非凡な才能を発揮する田部井剛。個性あふれる3人の演奏家による豊穣な音世界が展開します。

魅力的なカップリング曲
ファリャの「スペインの庭の夜」は、ラテン的な官能と躍動するリズム感が持ち味の作品で、元はピアノとオーケストラの作品です。2台のピアノからあふれ出るオーケストラのような響きが印象的です。また、グレインジャーの「緑の茂み」は、スコットランド民謡をベースにした楽曲で、親しみやすい旋律が繰り返される楽しい佳曲です。

素晴らしい音響が再現される名録音
ダイナミックな響きと繊細な透明感をあわせ持つ名録音は、音の名匠・深田晃によるもの。3人の演奏家が弾く2台のピアノから溢れる壮大な音世界を見事に捉えています。(転載終)

ドビュッシーは、第1ピアノが森下さん、第2ピアノのプリモが青柳さん、セコンドが田部井さんが担当しています。

まとめ

このCDは3,300円(税込)、と決して安価だとは言えない販売価格になっています。

当初、サブスクやダウンロード販売で「海」だけを聴けないかと思ったのですが、結局CDを購入しました。本筋から逸れますが、海からスペインの庭の夜、そして緑の茂みと進めば進むほど、グイグイと惹き込まれていきました。

しっとりかつしなやかな情緒とリズム感に溢れたファリャ、常動曲のように展開するグレインジャーと増していくグルーヴ感によって、訴えるものがどんどん大きくなっていっているように感じました。素敵な演奏です。

肝心のドビュッシーは中低音部がとても分厚く響いて、連弾や2台ピアノで気になる音の薄さ、平板さが姿を消して、とても素敵なアレンジで充実した演奏になっています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋

コメント

  1. 聖弥 より:

    hirofumi様
    いつも読み応えのある記事を本当にありがとうございます。
    「水の反映」に取り組んですっかりドビュッシー様の凄さにやられてしまった自分は、「ドビュッシーなら発表会の定番曲・月の光とアラベスクが弾けたらいいや」とかつて考えていた浅はかさを恥じ、「ドビュッシー様なんと素晴らしい!!他の曲も聴かなきゃな」と考えていた所にhirofumi様の「海」情報が….たとえ3300円でもこのCDは必聴ですね。アーティスト様の熱量を感じます。

    あと、菊池様の楽譜情報大変ありがとうございました。今後もバッハの編曲ものに取り組み続けますので非常に参考になりました。
    しばらく休会されると伺いましたが、hirofumi様のブログからはピアノに対する真摯さを感じております。
    どのようなお学び(いえ、もはや研究…の域ですね)の形であれ、今後も発信していただけますと大変有り難いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

    • hirofumi24 より:

      > 聖弥さま

      いつもお読みいただき、そしてコメントを大変ありがとうございます。
      僕のような記事でも何らかのお役に立っているのであれば、続けていく励みになります。

      ドビュッシーといえば、今度アルゲリッチの80歳を記念したアルバムが出るようですね。
      交響詩「海」の名盤はオケ版では数多ありますが、2台ピアノでは永井&アシャツ盤が素敵な演奏だと思います。
      ソロのアルバムも出ているのですが、苦労していることだけがわかって気の毒な感じもします(笑)

      レッスンはお休みをするのですが、こういう時代になりましたので
      オンラインで色んな先生にご指導いただくことができるので、これまで通り練習は続けて参ります。
      昨日、聖弥さまに刺激を受けてシャコンヌを触ってみました。
      しばらくトライしてみようかと思います。
      ありがとうございます。

      引続きよろしくお願いいたします。

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