いつもこのブログ「音楽徒然草」をお読みいただきありがとうございます。
ピアノデュオ176(アン・セット・シス)の山中惇史さんと高橋優介さんによる、各々のソロリサイタルが2022年5月22日に同日開催(マチネとソワレ)されました。
リサイタルの模様などを振り返ります。
アン・セット・シス スペシャルコンサート「山中惇史 ピアノ・リサイタル」
日時:2022年5月22日(日)13:00開演
場所:浜離宮朝日ホール
プログラム
ハイドン:ピアノ・ソナタ第35番 ハ長調 Hob. XVI:35
山中惇史:翡翠(かわせみ)の時
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13「悲愴」
(休憩)
ショパン:
ポロネーズ 変イ長調(遺作)
2つのポロネーズOp.26
舟歌 嬰ヘ長調Op.60
幻想ポロネーズ変イ長調Op.61
公演の模様
すっきりとクリアなのに豊かな倍音を湛えたふくよかな響き、山中さんのソロリサイタルは3度目になりますが、筆者はこの音を聴くといつも来て良かったと幸せな気持ちになります。
最初のハイドンは「ソナタアルバム1」の1番で、小学生の頃を思い出しましたが、まったく違う作品に初めて出会った感じすらしました。
作品を深く読み込んで、大きなスケールで骨格を捉え、その中で丁寧にディテールを組み立て、大人の音楽の中にチャーミングさを兼ね備えた魅力的な演奏でした。
このアプローチ(筆者の勝手な感想ですが)は、悲愴やショパン、すべての作品に共通して見られ、まさに山中さんの世界を創り出しておられるように感じられました。
翡翠の時は、エメラルドグリーンの小さな輝きが感じられるとても素敵な作品で、作曲された方の演奏に共感を覚えました。
後半のショパンのポロネーズが始まったとき「ああ、これは」と10年少し前に聴かせていただいた江口玲さんの雑司ヶ谷でのコンサートでのリズムと響きを思い出しました。
ラストの幻想ポロネーズは圧巻で、冒頭からクライマックスまで一貫した大きな流れが感じられ、歌に溺れることなく逆に聴き手に歌を感じさせる素晴らしい演奏でした。
アンコールは次の2曲でした。
ヘンデル/山中惇史編:オンブラ・マイ・フ
ミハウオフスキー/ゴドフスキ/山中惇史編:ショパン「子犬のワルツ」によるパラフレーズ
ハイドンのリハーサルの模様がツイッターで公開されていますので、リンクを貼りました。
【リサイタル終演《岡崎&東京公演》】
お越しくださった皆様ありがとうございました。精進します。
リハ映像、有名な曲ですがなかなか弾かれる事のないハイドンの大好きなソナタです。聴いていただければ嬉しいです。 pic.twitter.com/l9GvYyjf6W— 山中惇史 | Atsushi Yamanaka (@ginyamagin) May 23, 2022
アン・セット・シス スペシャルコンサート「高橋優介 ピアノ・リサイタル」
日時:2022年5月22日(日)18:00開演
場所:浜離宮朝日ホール
プログラム
モーツァルト:ピアノソナタ第13番ハ長調K.333
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調Op.60
ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第1番 ニ短調 op.28
公演の模様
高橋さんのソロリサイタルを聴かせていただいたのは今回が初めてです。
冒頭のモーツァルトは、筆者が勝手に思い描く「さかなくん」として愛される高橋さんらしい、いたずらっ子が音楽を楽しんでいるかのような可憐な演奏。
そして、美しい音としっかりとした骨太の構築感によって説得力のある音楽を聴かせていただきました。
続くショパンの「舟歌」は山中さんとの共通プログラム。
喜びの中にもある種の諦観、不安への畏れを感じさせた山中さんのバルカローレに対して、高橋さんの演奏では喜びそのもの、水面に射す明るい太陽を感じる演奏のように感じました。
休憩のあと演奏されたラフマニノフのピアノソナタ第1番は、これまでに聴いたことがなく、楽譜も見たことがありませんでした。予習もサボってしまったので、高橋さんの演奏が筆者にとって初ラフマソナタ1となりました。
ピアノとフォルテが繰り返される不吉な和音、甘いメロディのメノモッソの安寧を打ち破るおどろおどろしいアレグロの細かいパッセージ、と冒頭から聴き手に隙を与えず、まるでオーケストラを聴いているかのような大きなスケールの作品、そして演奏でした。
これこそ2台ピアノ、指は20本必要なのではないかと思えるような、壮大な作品を堂々とロマンティックに歌い上げた素晴らしい演奏を聴けて幸せでした。
肩で息をなさっていたようにお見受けした中でのアンコールはシベリウス。
シベリウス:もみの木
かなり準備が大変だったとのことで地獄の数ヶ月、よほど2番のソナタに変更しようかと思ったともおっしゃっていましたが、変更されなくて良かったです。
アン・セット・シス スペシャルコンサート サプライズ
高橋さんのアンコールの演奏が終わったところで「山中さんと一緒に話をします」との紹介で、昼の部でリサイタルをなさった山中惇史さんが登場。
ソロとデュオ、特に心理面での違いなど話されたあとはお二人の連弾が始まりました。
ニコニコと優しく包み込むような山中さんと何かホッとしたような高橋さん、いつものアンセ(176)の楽しい演奏を聴かせてくれました。
シャミナード:アラビアの牧歌
シャミナード:リゴードン
モーツァルト:ソナタニ長調第1楽章
お二人のサインがいただけるということでCDを購入しました。
事前インタビュー
ローチケインタビューで以下の内容についてお話しされています。
プログラムについて
ソロとデュオとの違い
二人共通のプログラム
今後について〜留学
詳細はこちらから:https://l-tike.com/classic/mevent/?mid=643179
また、スパイスの事前インタビューはこちら;https://spice.eplus.jp/articles/301707
山中惇史さんのプロフィール
1990年生まれ、愛知県岡崎市出身
東京藝術大学院音楽学部作曲科、同大学音楽研究科修士課程作曲専攻修了
第18回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲一般の部第3位
出身地である岡崎市へ楽曲を数多く提供しています。
JR岡崎駅イメージソング(2013)
岡崎市立翔南中学校校歌(2014)
祝典行進曲(2016)(岡崎市制100周年記念、岡崎市スクールバンド協議会委嘱)
ピアニストとして、上野耕平、漆原朝子、 漆原啓子、川井郁子、ゲルノット・ヴィニッシュホーファー、清水高師、ピエール・アモイヤル、寺谷千枝子、三縄みどり、松本蘭の各氏をはじめとする国内外のアーティストと共演
2014年小川響子とのデュオで第2回デザインK国際音楽コンクールにてグランプリ受賞。編曲でもクラシックからポップスまで幅広いアーティストに作品を提供しています。
上野耕平さんの楽しいコンサートにおけるピアノ伴奏は定評のあるところです。
2020年3月 東京藝術大学音楽学部器楽科(ピアノ専攻)(作曲科マスター修了後入学)卒業
ピアノは森陽子、山泉薫、菊地裕介、白石光隆、 安野直子、江口玲の各氏に師事
高橋優介さんのプロフィール
1994年生まれ、千葉県出身
高校から大学までの7年間、上野学園で学ぶ
ソルフェージュ:佐怒賀悦子
和声学:西尾洋、高畠亜生
室内楽:矢部達哉、今井信子、原田禎夫、村上曜子、彦坂眞一郎
ピアノ:齋藤由里子、横山真子、宮本玲奈、横山幸雄、久保春代、川田健太郎、草冬香
の各氏に師事
第10回東京音楽コンクールピアノ部門第1位及び聴衆賞受賞
指揮者の飯森範親、梅田俊明、円光寺雅彦、大友直人、下野竜也、高関健、山下一史の各氏と、ヴァイオリンの前橋汀子、矢部達哉、ヴィオラの今井信子、メゾソプラノ歌手の波多野睦美、クラリネットの谷尻忍、サクソフォンの上野耕平、彦坂眞一郎、ピアニスト・作曲家の山中惇史の各氏と共演。
ピアノデュオ176(アン・セット・シス)
ピアノデュオのコンサートの模様について記事にまとめています。
2022年12月にコンサートが予定されています。
Hakujuサロン・コンサートvol.12 山中惇史&高橋優介
ーアン・セット・シス 176鍵による創造性豊かな音空間
日時:2022年12月19日(月)19:00開演(18:15開場)
場所:ハクジュホール
プログラム
ラヴェル:ラ・ヴァルス(2台ピアノ版)
チャイコフスキー/アン・セット・シス編:組曲「くるみ割り人形」ほか
まとめ
デュオで活躍されるお二人が各々のソロで同じ日に同じホールで開催するリサイタル、それぞれの選曲や音楽作りの特徴が感じられる素晴らしいリサイタルでした。
そして、サプライズの連弾では、いつものお二人に戻って楽しいステージを聴衆にプレゼントしてくれました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
👍 🎹とともに 🎼とともに 🤞
👋掰掰👋
コメント